自転車のクランクの外し方は3規格で変わる|M22のネジと工賃4,290円が分かれ道

自転車のクランクの外し方は3規格で変わる|M22のネジと工賃4,290円が分かれ道のアイキャッチ画像

チェーンリングを替えたい、BBから異音がする、ペダルの根元がガタつく——どの入口から入っても、最後は「クランクを外す」という一点に行き着きます。ところがネットで手順を調べると、六角レンチ1本で外れると書いてある記事と、専用工具が絶対に必要だと書いてある記事が両方出てきて、どちらが自分の自転車の話なのか分からなくなります。

結論から言うと、クランクの外し方は軸(ボトムブラケットシャフト)の形が何かで完全に決まります。四角い軸(スクエアテーパー)なら「コッタレス抜き」と呼ばれる専用工具が要り、ホローテックIIのような2ピースクランクなら定価405円の小さな樹脂工具と六角レンチだけで済みます。工具を買う前にこの見分けを済ませておかないと、届いた工具がネジ穴に入らないという事態になります。

この記事では、シマノのディーラーマニュアルとホーザン(パークツール日本総代理店)の整備情報、サイクルベースあさひの工賃表という一次情報をもとに、軸の見分け方から実際の手順、外れないときの原因、そして「自分でやるか店に出すか」の線引きまでを順番に整理します。安全に関わる締め直しのトルクも、メーカー公式の数値をそのまま載せます。

🚲 この記事でわかること

・自分の自転車の軸が「四角軸/オクタリンク/2ピース」のどれかを30秒で見分ける方法
・規格別に必要な工具と、その定価・標準価格(シマノ純正とパークツール)
・スクエアテーパーを外す4ステップと、ホローテックIIを外す手順
・外れないときの3つの原因と、店に出したときの工賃の目安

目次

クランクを外す前に、軸の形を見分けないと工具が無駄になる

クランクを外す前に、軸の形を見分けないと工具が無駄になるの解説画像

四角い軸・ギザギザの軸・キャップつき、見分けは30秒で済む

最初にやることは工具を買うことではなく、クランクの中心を覗き込むことです。中央のボルトかキャップを外すと軸の断面が見えます。ここが四角なら「スクエアテーパー(角型)」、細かい溝が放射状に並んでいれば「オクタリンク」または「ISIS」、中央に大きな樹脂キャップがあり左クランクの側面にボルトが2本並んでいれば「ホローテックIIなどの2ピースクランク」です。

この3つで必要な工具がまるごと変わります。角型とオクタリンクは「クランク抜き(コッタレスクランクプーラー)」で軸から引き剥がしますが、2ピースクランクは左クランクを外して右側を押し出すだけなので、引き剥がす工具そのものが要りません。ホーザンの工具逆引きでも、CCP-22は角型用、CCP-44は「角型ボトムブラケットシャフトには使用できません」と対応が分けられています。

落とし穴は、キャップを外すまで判断できない車体があることです。シティサイクルでは金属の丸いキャップの奥に14mmのナットが隠れている構造がよくあります。傷をつけないよう、隙間にウエスをかませてゆっくり起こしてください。判断がつかないまま通販で注文すると、ネジ径が合わずに手元に残ります。

📖 用語チェック

コッタレスクランク=コッター(くさびピン)を使わずに、テーパー(先細り)の軸へ圧入して固定する方式のクランク。現在のスポーツ車・シティサイクルのほとんどがこれで、外すには軸から引き剥がす専用工具「コッタレス抜き=クランクプーラー」が必要になります。ホーザンの整備情報では、このクランク側のネジはM22サイズと示されています。

スクエアテーパーが今も一番多い理由

迷ったらまず角型を疑って構いません。シティサイクル、エントリーグレードのクロスバイクやミニベロ、少し前のロードバイクまで四角軸は現役です。パークツールCCP-22の仕様には「M22×1.0のクランクネジに使用可能」と明記されており、このM22×1.0が事実上の共通規格なので、1本で複数台に使い回せます。

角型が生き残っている理由は、部品が安く互換性が広いからです。裏を返せば、テーパーへの圧入で固定する構造上、締めるほどクランクが軸に食い込みます。長年外していない車体では、力をかけた瞬間に「バキッ」と大きな音がして外れることがあり、これは正常です。ただし食い込みが深いぶん、ネジ山の破損リスクも角型が一番高い規格です。

ただし互換性は万能ではありません。ホーザンはCCP-22・CWP-7ともに「TA等一部のクランクには使用できません」と明記しています。またスギノエンジニアリングは自社FAQで、3ピースクランクにSG75テーパーとマイティテーパーの2規格があること、他社製品との混用は保証対象外になる場合があることを案内しています。「四角ならどれでも同じ」ではありません。

ホローテックIIには「引き剥がす」工程がそもそもない

実は、ホローテックIIの左クランクを外すのにクランクプーラーは1本も要りません。この方式は右クランクと軸が一体で、左クランクは軸の先端にセレーション(すじ状の溝)でかみ合い、2本のボルトで締め付けているだけだからです。ボルトを緩めれば左クランクは手で抜け、右クランクを反対側から押し出せばクランクセット全体が外れます。

必要なのは、樹脂キャップを回す専用工具(シマノTL-FC16、定価405円)と5mm六角レンチだけ。角型用のプーラーを買っても入るネジ穴がないので使い道がありません。初めてクランクを外す人にはホローテックIIのほうが簡単です。

ただし簡単なのは「外す」までで、戻すときは話が別です。シマノのディーラーマニュアルは左クランクアームの2本のボルトについて、片側を一度に締め付けず交互に締め、締付けトルクが12〜14N・mであることをトルクレンチで確認するよう警告し、約100km走行後の再確認も求めています。締付けが弱かったり交互でなかったりすると左クランクアームが外れ、転倒して重傷を負う場合がある、という表現です。ここは手の感覚で済ませない部分です。

電動アシスト車は「自分で外さない」がメーカーの答え

電動アシスト自転車のクランクは、見た目が普通の四角軸でも扱いが違います。ヤマハのPAS取扱説明書には「パワーアシスト(電動補助)機構は精密部品で構成されていますので分解しないでください」と明記され、乗車前点検にペダル・クランクの状態は含まれるものの、異常があれば「すぐに販売店で点検・整備をお受けください」という案内です。

理由は、アシストユニットの内部にセンサー類が組み込まれているためです。作業がユニットのシール部やセンサー部に及ぶと、防水性やアシスト制御に影響します。同社は購入から2か月目の初回点検と6か月ごとの定期点検を販売店で受けるよう案内しており、駆動部の整備はその枠内で任せる前提設計です。

実用上は、チェーンリング交換などでクランクを外したい電動アシスト車は、素直に販売店へ持ち込むのが正解です。ユニットを壊した場合の修理費と比べれば、工賃は安い保険です。なお、禁止の範囲は車種で異なるので取扱説明書で確認してください。

工具は何を買えば足りる?角型専用・兼用・純正の3ルート

コッタレス抜きは「外ネジ+押しボルト」の二重構造でできている

クランクプーラーの構造を理解すると失敗が激減します。この工具は二重のネジでできていて、外側の太いネジをクランク側のM22のネジ穴にねじ込み、内側の押しボルトを締めると先端がBB軸の端面を押します。外側が固定、内側が押す。この反作用でクランクが軸から浮いて抜けます。

ここから鉄則が2つ出てきます。ひとつは、外側の太いネジを手で回らなくなるまで、まっすぐ、奥までねじ込むこと。浅いと押しボルトの力が数山のネジに集中し、アルミのネジ山を根こそぎ持っていきます。もうひとつは、押しボルトを回す前にBB軸の穴に何も残っていないか確認すること。ワッシャーが残っていると押しボルトが空回りします。

この工具は年に何度も使うものではありません。BB交換は数年に一度、チェーンリング交換もその前後です。だからこそ「安いから」で規格違いを買うと、次に使うときには何を買ったか忘れていて、また無駄になります。パッケージではなく自分の軸の形で選んでください。

角型専用・オクタリンク専用・兼用、どれを選ぶか

パークツールのクランクプーラーは3本立てで、対応規格と価格がはっきり分かれています。角型だけならCCP-22、オクタリンクやISISだけならCCP-44、両方あり得るなら先端チップを差し替えるCWP-7という整理です。CWP-7は使わない側のチップを本体に付けておけるので紛失しにくいのも利点です。

📊 クランクプーラー3本の比較(自転車の教科書調べ/各社公式の公表値より)
項目 CCP-22 CCP-44 CWP-7
対応規格 角型(スクエアテーパー)専用 オクタリンク・ISIS。角型には使用不可 先端チップ交換で角型・オクタリンク・ISISに対応
ネジ規格・特徴 M22×1.0。長く深いネジ部のクランクにも適応 長いハンドルで堅く締まったクランクも外せる 未使用チップを本体に取り付けて保管できる
標準価格(税込) 3,729円 3,817円 2,970円
注意 TA等一部のクランクには使用不可 角型に無理にねじ込まないこと TA等一部のクランクには使用不可

兼用のCWP-7が一番安いという並びは意外かもしれません。専用機はハンドルやネジ部の作りに費用がかかるためで、CCP-44の「長くなじみの良いハンドル」は固着したクランクに力を安定してかけるための設計です。1台だけならCWP-7、複数台や固着車を扱うなら専用機と考えてください。なおCWP-7はCWP-6C、CCP-22はCCP-2C、CCP-44はCCP-4Cの後継で、いずれも現行品です。

シマノ純正のTL-FC10とTL-FC11は役割が違う

シマノ純正で揃えるなら、名前が似た工具の役割の違いを押さえる必要があります。TL-FC10(品番Y13009010、定価2,320円)はコッタレスクランク専用工具で、シマノ製のほかオクタリンククランクにも対応し、ディーラーマニュアルでは16mmスパナの併用が指示されています。

一方のTL-FC11(品番Y13098210、定価6,111円)は、コッタレスクランク用BBの取付・取外しに使う工具で、14mmソケットが付属し、フィキシングボルトやグリップナットの締め込みにも使えます。こちらは15mmスパナとの併用です。価格差は守備範囲の広さの差で、クランクだけ外したい人にTL-FC11は過剰です。

ホローテックII側の純正工具は用途がさらに細かく分かれます。左クランクのキャップを回すTL-FC16が定価405円、BBのアダプター(ワン)を回すTL-FC32が定価1,736円、どの位置でも取り付けできるTL-FC33が定価4,963円、BBの規格変換に使うTL-FC24が定価543円。オクタリンククランクの保護工具TL-FC15は定価798円です。クランクを外すだけならTL-FC16で足り、BBまで外すならTL-FC32以降が要ります。

六角レンチとスパナのサイズを先に確認しておく

プーラーばかり気にして、肝心のボルトを緩める工具がなく作業が止まる——これが初回で一番多い足踏みです。シマノのディーラーマニュアルの使用工具一覧では、5mm・8mm・10mmの六角レンチ、15mm・16mm・17mmのスパナ、プラスチックハンマーが挙げられています。角型のクランクセットは8mm六角レンチ、オクタリンクは8mmまたは10mm六角レンチの指定です。

シティサイクルでは六角ではなく14mmのナット固定の車体も多く、その場合はソケットレンチかコッタレスクランクレンチが要ります。ホーザンの整備情報でも、破損クランクの取り外しに14mm・15mmのコッタレスクランクレンチと300mmのモンキーレンチが挙げられています。長いレンチが要るのは締結が固いからです。

注意点として、8mm六角レンチはL字型の短いものだと力が入りません。角型の固定ボルトは35〜50N・mで締まっているので、短辺を握ると手のひらを痛めます。長辺側を持てる工具かソケット+ラチェットを用意してください。作業中に車体が動くと危険なので、メンテナンススタンドがあると安全性が上がります。

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スクエアテーパーのクランクを外す4ステップ

スクエアテーパーのクランクを外す4ステップの解説画像

①キャップとボルトを外す(左右とも「左に回して緩む」)

まずキャップを外します。樹脂の丸いキャップならマイナスドライバーで縁を起こし、金属のダストキャップなら六角穴かマイナス溝に合う工具で反時計回りに回します。中から現れるのが、8mm六角穴のボルトか14mmのナットです。

ここで最も多い勘違いが「左側は逆ねじだろう」という思い込みです。逆ねじなのはペダルの左側と、多くのBBの右ワンであって、クランクの固定ボルトは左右とも正ねじです。サイクルベースあさひのメンテナンス講座でも、クランク中心のボルトは左回転で外し、反対側も同じく左回転で外す(正ねじ)と説明されています。逆ねじだと思い込んで右に回すと、ただ締め込むだけになります。

ボルトが固くて動かないときは、体重をかけるのではなく工具を長くします。8mm六角レンチにパイプを継ぐより、ソケットとラチェットに持ち替えるほうが安全です。角度が斜めになると六角穴をなめるので、工具がまっすぐ入っているかを一度確認してから力をかけてください。ここでボルトの頭を潰すと、以降の工程がすべて難しくなります。

②ワッシャーを残したまま次に進むと一発で壊れる

ボルトを抜いたら、クランクのネジ穴の底を必ず覗いてください。多くの車体では、ボルトの下に金属のワッシャーが1枚入っています。これが残ったままクランクプーラーの押しボルトを締めると、押しボルトの先端がBB軸ではなくワッシャーを押すことになり、力が逃げてクランクは動きません。それでも「固いのか」と力を足すと、ワッシャーが変形して穴の奥で噛み込み、最悪ネジ山ごと持っていかれます。

これは工具の欠陥ではなく手順の抜けで起きる失敗で、しかも作業前に指を突っ込めば10秒で防げます。ワッシャーは磁石つきのピックアップツールか、細いマイナスドライバーの先で引っかけて取り出します。取り出したワッシャーは、組み戻すときに必ず必要になるので紛失しないよう小皿にまとめておいてください。

加えて、ネジ穴の内部が泥や古いグリスで埋まっていることもよくあります。パーツクリーナーとウエスで穴の中を掃除し、ネジ山が最後まで生きていることを目視してから工具をねじ込みます。ホーザンの整備情報でも、ネジが破損したケースでは「破損箇所をヤスリで清掃してからアタッチメントを真っ直ぐにねじ込む」という手順が示されており、清掃が前提工程として扱われています。

⚠️ 作業前にチェック

・ボルトの下のワッシャーを取り除いたか(残っていると押しボルトが空回りします)
・ネジ穴の中を掃除し、ネジ山が最後まで残っているか目視したか
・工具の規格は自分の軸と合っているか(角型にオクタリンク用は入りません)
・作業スペースに車体を固定できるか。ネジ山の破損が疑われる状態なら、そこで手を止めて自転車店に相談するのが結果的に安上がりです

③外ネジは手で止まるまで、まっすぐ深くねじ込む

プーラーの外側の太いネジを、クランクのネジ穴に指で回し入れます。工具に付属のスパナやハンドルを使うのは、指で回らなくなってからです。斜めに入ったまま工具で締めると、そこでネジ山が削れます。ホーザンの整備情報でも「真っ直ぐにねじ込む」ことと、グリスを塗ってからスパナでしっかりねじ込むことが手順として示されています。

ねじ込み量の目安は「これ以上入らない」ところまで。角型クランクのネジ穴は見た目より深く、CCP-22が「長く深いネジ部を持つクランクにも適応できます」と説明されているのは、この深さに対応するためです。浅いプーラーを深いネジ穴に使うと、噛み合うネジ山が数山しかなくなり、押し出す力で山が飛びます。

この工程で押しボルトが先に出ていると、外ネジが奥まで入りません。作業前に押しボルトを反時計回りに回し、先端を工具の中に引っ込めておいてください。ここまで丁寧にやれば、あとの工程はほぼ機械的に終わります。逆にここを飛ばすと、次の④で取り返しがつかなくなります。

④押しボルトを締めてクランクを抜く。左クランクも同じ手順

外ネジが奥まで入ったら、内側の押しボルトを時計回りに締めていきます。最初は軽く、途中から急に重くなり、そのまま回し続けると「バキッ」という音とともにクランクが軸から浮きます。この音は圧入が解けた音なので、壊れたわけではありません。浮いたあとは押しボルトを回し続ければクランクが手前に出てくるので、抜けたら工具を外します。

反対側の左クランクも、まったく同じ手順です。ボルトは正ねじ、ワッシャーの確認、外ネジを深く、押しボルトで抜く。左クランクはチェーンリングがない分だけ軽く、作業もしやすいはずです。左右を外せば、フレームにはBBだけが残ります。

抜いたクランクは、軸に接していた四角い穴の内側を必ず観察してください。角が丸くなっていたり、かじり跡が出ていたら、締付けが緩いまま乗り続けた証拠です。この状態で再利用すると、次に締めてもすぐ緩みます。あさひのメンテナンス講座でも、組み戻しの最後に左クランクを180度の位置に装着してガタがないか確認する手順が示されています。不安ならクランク交換を自転車店で相談してください。

ホローテックIIの左クランクは405円の工具で外れる

TL-FC16で樹脂キャップを緩める

2ピースクランクの作業は、左クランクの中央にはまっている樹脂キャップを外すところから始まります。これはベアリングのすき間を詰めるための調整キャップで、専用工具のTL-FC16(定価405円)を溝にはめて反時計回りに回すだけで外れます。ディーラーマニュアルが指定する締付けトルクは0.7〜1.5N・mで、これは指先で回せる程度の弱い力です。

「405円の工具のために注文するのは面倒だ」と、マイナスドライバーとハンマーで叩き回す人がいますが、これはやめてください。キャップは樹脂で、溝を欠くと二度と締められなくなります。工具は自転車店の店頭でも扱いがあり、定価も高くありません。専用工具を使う価値がここにあります。

📋 スペックカード:シマノ TL-FC16 クランク取り付け工具
品番 Y13009220
用途 ホローテックIIの左クランクキャップの脱着(FC-7800/M960/M800/M760/M761用として案内)
対応する締付けトルク キャップの指定トルクは0.7〜1.5N・m(シマノ ディーラーマニュアル)
定価(税込) 405円

外れ止めプレートを押し込んでから2本のボルトを緩める

キャップを外すと、左クランクの側面に5mm六角穴のボルトが2本並んでいるのが見えます。ここでいきなり緩めても左クランクは抜けません。ボルトのすぐ横にある小さな金属片が「外れ止めプレート」で、これがクランクの溝に引っかかって抜け落ちを防いでいるからです。

手順としては、2本のボルトを交互に少しずつ緩めてから、外れ止めプレートを指かマイナスドライバーで押し上げ、プレートピンを溝から外します。ディーラーマニュアルの組み付け手順では、この外れ止めプレートを押し込み、プレートピンが確実にセットされていることを確認してから左クランクアームのボルトを締める、と指示されています。外すときはその逆をたどるわけです。

プレートには向きがあり、マニュアルにも「必ず図に示されている方向でセットしてください」と注意書きがあります。外すときにどちら向きに付いていたかをスマートフォンで撮っておくと、組み戻しで迷いません。プレートを曲げてしまった場合は交換部品になるので、無理にこじらないでください。

右クランクはプラスチックハンマーで軸ごと押し出す

左クランクが抜けたら、残るのは右クランクと一体になった中空軸です。左側から軸の端を樹脂ハンマーで軽く叩くと、軸ごと右側にすっと出てきます。ディーラーマニュアルの使用工具一覧にプラスチックハンマーが載っているのはこのためで、金属ハンマーを直接当てると軸の端面を潰します。

ここでBBのアダプター(ワン)まで外す必要はありません。チェーンリング交換やクランク清掃が目的なら、軸を抜いた時点で作業は完了です。BBを外すのはベアリングにガタや異音が出たときで、その場合はTL-FC32(定価1,736円)やTL-FC33(定価4,963円)といったアダプター工具が別途必要になります。

注意点として、シマノはインナーカバーについて「正しく装着されない場合、軸にさびが発生しそれにより軸が破損し、転倒してけがをする場合があります」と警告しています。BBまで分解した場合は、左右のアダプターにグリスを塗り、インナーカバーを必ず戻してください。防水性が落ちると、次に外すときの固着の原因にもなります。

戻すときが本番。12〜14N・mと100km後の再確認

ホローテックIIで神経を使うのは、外すときではなく戻すときです。手順は、右クランクユニットをBBに当たるまで確実に挿入し、左クランクの幅広部と軸の幅広部を合わせてセット、TL-FC16でキャップを0.7〜1.5N・mで締め、外れ止めプレートを押し込んでから2本のボルトを12〜14N・mで締める、という順番になります。

ボルトは片側を一度に締め切らず、交互に少しずつ締めます。片側だけ先に締め切ると、クランクが軸に対して傾いて固定され、走行中に緩む原因になります。マニュアルはこの締め方の指示とあわせて、締付けが弱かったり交互でなかったりすると左クランクアームが外れて転倒・重傷につながる、という警告を並べています。

そして約100km走行後に、もう一度トルクレンチで締付けトルクを確認します。走り出してから馴染みが出るぶん、初期に緩みが出やすいためです。トルクレンチを持っていない場合、この作業だけは自転車店に任せるほうが安全です。安全部品の締結は、感覚で代用できる部分ではありません。

外れないときの原因は、ネジ山・規格・固着の3つに絞れる

ネジ山をなめてしまったときの3つの分岐

プーラーの外ネジがスカスカ回るようになったら、クランク側のM22のネジ山が削れています。ホーザンの整備情報は、この状態を破損の程度で3つに分けて手順を示しています。入口周辺だけが破損して奥にネジ山が残っている場合は、破損箇所をヤスリで清掃し、アタッチメントを真っ直ぐにねじ込んでグリスを塗り、スパナでしっかりねじ込む。全体的に破損して薄くネジ山が残る場合も同じ方法を試し、破損が激しければ簡易工具でネジ山を修正してから作業する。

そしてネジ山が全く残っていない場合は、金のこぎりやグラインダーでクランクアームの一部を切断する、というのが公式に示された最終手段です。ここまで来るとクランクは再利用できません。切削粉や破片が飛ぶため、ホーザンは保護グローブと保護めがねの着用を求めています。

現実的な判断としては、ネジ山がなめたと感じた時点で自分の作業を止めるのが賢明です。切断はグラインダーの扱いに慣れていないと危険で、フレームやBBを傷つけると被害が広がります。この段階で自転車店に持ち込めば、クランク代と工賃で済む話が、フレーム修理まで広がるのを防げます。

規格違いのプーラーを無理にねじ込んでいる

もうひとつ多いのが、工具そのものが合っていないケースです。オクタリンク・ISIS用のCCP-44には「角型ボトムブラケットシャフトには使用できません」という明確な但し書きがあり、逆に角型用のCCP-22をオクタリンク軸に使っても押しボルトの先端形状が合いません。それでも外ネジ側は途中まで入ってしまうことがあるので、「入ったから合っている」と誤認しやすいのが厄介な点です。

さらに古いフランス系のクランクという落とし穴があります。ホーザンはCCP-22・CWP-7ともに「TA等一部のクランクには使用できません」と明記しています。M22とM23はごくわずかな径の差ですが、噛み合わないものは噛み合いません。ヴィンテージのランドナーやクラシックなクランクを扱うときは、専用サイズの工具を探す必要があります。

対策はシンプルで、工具を注文する前にクランクのネジ穴の直径をノギスで測るか、外したボルトを持って自転車店の店頭で照合することです。スギノエンジニアリングも自社FAQで、クランクの取付け・取外しには取扱説明書に記載の専用工具が必要であり、専門知識のあるサイクルショップに相談するよう案内しています。メーカーが「店で相談を」と書いている領域だ、という前提で臨むと判断を誤りません。

固着しているときは、力より時間をかける

何年も外していない車体では、軸とクランクの接触面が腐食で貼り付いていることがあります。この状態で押しボルトに一気に力をかけると、クランクが抜ける前にネジ山が飛びます。ホーザンの使用工具リストにグリスと並んで浸透性潤滑剤が挙げられているのは、この固着対策のためです。

手順としては、軸とクランクの合わせ目に浸透性潤滑剤を差し、しばらく置いてから作業に戻ります。押しボルトは一気にではなく、少し締めて止め、また少し締める。長いハンドルの工具(CCP-44の「長くなじみの良いハンドル」がまさにこの用途です)を使い、瞬間的な衝撃ではなくじわりとした力をかけるのがコツです。

なお、BBまわりの固着はクランクの脱着だけでなく、走行中の異音として先に症状が出ていることが多い部分です。ペダルを踏むたびに「コッ、コッ」と鳴るような音は、クランクの緩み・BBのガタ・チェーンリングボルトの緩みなど複数の原因が絡みます。原因の切り分けについては、こちらの記事も参考にしてください。

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自分でやるか店に出すか、工賃表で線を引く

サイクルベースあさひの工賃を見ると相場感がつかめる

判断材料として、全国チェーンの公表工賃を見ておきます。サイクルベースあさひの修理工賃表では、シティサイクルのクランク交換が右クランク4,290円(税込)、左クランク2,530円(税込)。スポーツ車ではクランク(片側)交換が2,530円(税込)、BBシャフト一体型(ホローテックIIなど)の交換が6,160円(税込)で、左側のみの交換なら2,530円(税込)と案内されています。いずれも基本工賃で、部品代は別途です。

クランクを外す目的が別作業の準備である場合は、加算という形で工賃が見えます。スポーツ車のチェーンリング交換は2,750円(税込)ですが、クランク(片側)の脱着が必要な場合は1,650円(税込)、BBシャフト一体型クランクの脱着が必要な場合は4,400円(税込)が加算されます。シティサイクルのBBガタ調整1,760円(税込)でも、クランク脱着が必要なら右クランクで3,300円(税込)、左クランクで1,650円(税込)の加算です。つまり「クランクを外す」という工程そのものに、明確な値段がついています。

BB側までまとめて頼む場合の目安も出ています。スポーツ車のカートリッジBB交換が5,500円(税込)、BBシャフト一体型のBB交換が6,600円(税込)、圧入式BB交換が9,900円(税込)、カップ&コーンのオーバーホールが7,700円(税込)。シティサイクルはBB全交換・ベアリング交換が9,460円(税込)、一般車カートリッジBB交換なら7,260円(税込)です。料金は店舗・時期により異なる場合があるので、持ち込む前に近くの店舗で確認してください。

🎯 目的別の選び方
あなたの状況 おすすめの選択 必要なもの・費用の目安
ホローテックIIのクランクを外したい 自分でやる価値が高い TL-FC16(定価405円)+5mm六角レンチ+トルクレンチ
角型のクランクを今後も何度か外す 工具を買って自分でやる CWP-7(標準価格2,970円)または CCP-22(標準価格3,729円)
今回1回きり・工具を持っていない 自転車店に依頼する スポーツ車のクランク(片側)交換で2,530円(税込)が目安
電動アシスト車・ネジ山が怪しい 自分では作業しない 販売店へ。ヤマハはアシスト機構を分解しないよう案内

1回きりなら店、2回目以降なら工具という考え方

工具を買うか工賃を払うかは、回数で決めると迷いません。角型のクランクプーラーは標準価格で2,970円から3,817円の幅にあり、スポーツ車のクランク(片側)交換の工賃2,530円(税込)とそう遠くない位置にあります。1回きりの作業なら店に頼んだほうが確実で、しかもプロの目で他の消耗も見てもらえます。

逆に、チェーンリングを定期的に替える、BBを自分で管理する、家族の自転車も含めて複数台を触る、という人は工具を持つ意味が大きくなります。特にホローテックIIのTL-FC16は定価405円なので、この規格の車体に乗っているなら持っていない理由がほとんどありません。

もうひとつの判断軸が、トルクレンチを持っているかどうかです。クランクの締結は35〜50N・m、ホローテックIIの左クランクは12〜14N・mと数値が指定されており、これを守れないなら外す作業だけできても意味がありません。工具の予算を組むときは、プーラーとトルクレンチをセットで考えてください。

店に出したほうがいいケースははっきりしている

次のどれかに当てはまるなら、迷わず自転車店に持ち込んでください。ネジ山がなめている、クランクのボルトの六角穴を潰した、電動アシスト車である、BBシェルのネジ山が怪しい(あさひの工賃表にはBBタッピングのみ5,500円(税込)という項目があり、これはシェル側のネジを立て直す作業です)、そしてトルクレンチを持っていない。

シマノ自身、ディーラーマニュアルの冒頭で「ディーラーマニュアルは自転車安全整備士、自転車技士など専門知識を有する方を対象としています」「記載されている内容に不明な点がある場合は絶対にご自身で作業しないでください」と述べています。メーカーが想定している読者はプロであり、一般ユーザーがそれを参照して作業することは前提にされていません。

とはいえ、これは「絶対にやるな」という意味ではなく、判断の基準を持てという意味です。手順を理解し、規格を確認し、トルクレンチを用意し、迷ったら止める。この4つが揃っているなら、クランクの脱着は自宅整備の範囲に十分収まります。揃っていないなら、工賃はそのぶんの保険料だと考えるのが妥当です。

外した後の「戻す」ほうが、実は本当の山場

締付けトルクは規格ごとに違う

クランクは外れたら終わりではなく、正しく戻して初めて作業が完了します。シマノのディーラーマニュアル(DM-FC0002)に載っている数値を、作業箇所ごとに整理しておきます。感覚で締めると、緩みか、ネジの破断か、どちらかに振れます。

📊 締付けトルク早見(シマノ ディーラーマニュアルの公表値)
作業箇所 締付けトルク 補足
スクエア/オクタリンクのクランクセット 35〜50N・m 角型は8mm六角レンチ、オクタリンクは8mmまたは10mm六角レンチ
スクエア/オクタリンクのBB本体 50〜70N・m 本体を取付けてからアダプターを取付ける
ホローテックIIの左クランクキャップ 0.7〜1.5N・m TL-FC16を使用。指先で回る程度の弱い力
ホローテックIIの左クランク2本ボルト 12〜14N・m 交互に締める。約100km走行後に再確認
ホローテックIIのBBアダプター 35〜50N・m TL-FC32等の専用工具を使用
ペダル 35〜55N・m 右は右ねじ、左は左ねじ。ねじ部に少量のグリス

BBの右ワンは逆ねじ。シェル幅で例外もある

クランクの先にあるBBまで外すなら、ねじの向きが最大の関門です。あさひのメンテナンス講座によれば、BBは左側をBBツールで左回転させて緩め(正ねじ)、右側はシェル幅が68mmまたは73mmなら右回転で外します(逆ねじ)。ところが70mm幅の車体では右側も左回転で外す(正ねじ)という例外があります。

シマノのディーラーマニュアルも同じ構造を裏づけていて、ホローテックIIの右アダプターは左ねじ、ただし70mm[M36]の場合は右ねじ、左アダプターは右ねじと記載されています。BBシェルの幅は68mm・73mm・83mmが一般的で、幅によって入れるスペーサーも0.7mm・1.8mm・2.5mmと変わります。プレスフィットBBの場合はさらに別系統で、ロードが86.5mm、MTBが92mmや89.5mmのシェル幅に対応します。

ここで「逆ねじだと思って逆に回す」と、緩めるつもりで締め込んでBBを固着させます。作業前にBBシェルの幅を測り、どちら向きが緩む方向かを紙に書いて手元に置くくらいの慎重さで丁度いい部分です。プレスフィットBBについては、シマノがアダプターを取外し時に破損する可能性があるため再利用しないよう指示している点にも注意してください。

グリスと再確認を省かないこと

組み戻しでは、ディーラーマニュアルの指示どおりグリスを使います。ホローテックIIでは左右のアダプター、左クランクと軸の締結部、キャップにグリスを塗るよう指定されており、キシミ音が出た場合は締結部のグリスアップと指定トルクでの締め直しが対処法として示されています。角型・オクタリンクでも、BBを組み付ける際にグリスを塗るよう案内されています。

ただし例外があり、BBの本体やアダプターがプラスチック製の場合はグリスを塗らないよう指示されています。金属なら塗る、樹脂なら塗らない。この一行を読み飛ばすと、樹脂部品が膨潤したり滑ったりする原因になります。

そして最後は乗車前点検です。シマノは乗車前に締結部にガタや緩みがないことを確認し、定期的にクランクアームやペダルを増し締めするよう求めています。クランクを外した後の最初の1回は、駐輪場でクランクを両手で左右に揺すってガタを確かめてから走り出してください。チェーンまわりも一緒に触るなら、チェーンの規格と寿命の考え方をまとめたこちらも参考になります。

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Q クランクを外すのにペダルも外す必要はありますか?
A クランクを軸から抜くだけならペダルは付けたままで作業できます。ペダルを外す必要があるのは、クランクごと交換する場合や作業スペースが取れない場合です。なおペダルは右が右ねじ、左が左ねじで、締付けトルクは35〜55N・m。あさひの工賃表ではペダル交換(左右セット)が1,760円(税込)と案内されています。

まとめ|自転車のクランクの外し方は、軸の形と工具選びで9割決まる

🚲 この記事の結論

クランクの外し方は、四角軸か2ピースかで必要な工具がまるごと変わります。まずキャップを開けて軸の断面を確認し、それから工具を選んでください。

✅ 要点チェック
  • ✔ 軸の形が先:角型・オクタリンク・2ピースで工具が別
  • ✔ 固定ボルトは正ねじ:左右とも左回転で緩む
  • ✔ ワッシャーを抜く:残すと押しボルトが空回りする
  • ✔ 外ネジは奥まで:浅いとネジ山が飛ぶ
  • ✔ 戻しはトルク管理:数値は公式の指定に従う

最初の一歩は、工具を注文することではありません。今すぐ自転車のところへ行って、クランク中央のキャップを1つ開けてみてください。四角い軸が見えたらCWP-7やCCP-22のような角型対応のプーラーを、樹脂キャップと2本のボルトが見えたらシマノTL-FC16と5mm六角レンチを用意する。この見分けさえ済ませておけば、届いた工具が使えないという最悪の空振りは起きません。あとは手順どおりに、押しボルトを少しずつ締めていくだけです。ネジ山が怪しい、六角穴を潰した、電動アシスト車である——この3つのどれかに当てはまるなら、その時点で作業を止めて自転車店に相談するのが、結果として一番安く済みます。

※工具の価格・工賃は変動します。トルクや手順はお使いのモデルの取扱説明書が優先されます。最新情報は各メーカー・店舗の公式サイトでご確認ください。

参考にした一次情報:シマノ ディーラーマニュアル クランクセット/ホーザン メカニカルアドバイス(破損したクランクセットの取り外し)/ホーザン 工具逆引き クランクプーラー/サイクルベースあさひ 修理工賃表/サイクルベースあさひ メンテナンス講座/スギノエンジニアリング よくあるご質問/ヤマハ PASオーナーサポート

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自転車の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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