自転車保険を「とりあえず安いやつで」と検索して、比較サイトのランキングを上から眺めて、結局どれも似たような値段に見えて閉じてしまう——。自転車店の売り場でも、この相談はよくあります。値段だけが並んでいる表を見ても、何が違うのか分からないからです。
結論から言うと、いま国内で単独加入できるいちばん安い自転車保険は、全日本交通安全協会の「サイクル安心保険」プランAの年間掛金1,770円(Web申込み)です。そして、わずかな上乗せで選べるプランDでは、賠償責任の保険金額が1億円から3億円に上がります。さらに、すでに自動車保険や火災保険、共済に入っている人なら、月110円の特約を足すだけで条例の要件を満たせることもあります。
この記事では、各社・各団体の公式ページとパンフレットから拾った掛金と補償額をそのまま並べて、「表示価格の最安」と「あなたにとっての最安」がどこでズレるのかを整理します。年齢の壁、示談交渉サービスの有無、共済本体の掛金といった、ランキング表には載らない条件まで含めて判断できるようにしていきます。
・単独で入れる自転車保険の最安ラインと、その掛金の内訳
・賠償3億円が年2,000円で成立するプランの存在
・すでにある保険に月110円から乗せる特約ルートの条件
・主要ルートを同じ物差しで並べた比較表と、年齢の壁
最安の自転車保険は「どこから入るか」で答えが変わる

条例が求めているのは他人への賠償だけ
自転車保険選びでいちばん最初に押さえるべきなのは、条例が求めている中身です。国土交通省の資料によると、令和6年4月1日現在で34都府県が条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化し、10道県が努力義務化しています。ここで求められているのは、自転車の利用によって生じた「他人の生命又は身体の損害」を賠償できる備えです。自分のケガの補償や、自転車の盗難補償は条例の要件には含まれません。
東京都の場合、令和2年4月1日に施行された条例改正で、自転車利用者・保護者・業務で自転車を使う事業者・自転車貸付事業者に加入義務が課されました。都のページでは、加入できる保険等として個人賠償責任保険(火災保険や自動車保険の特約)、TSマーク付帯保険、共済、自転車専用保険、職場や学校の団体保険、クレジットカード付帯保険が挙げられています。つまり「自転車保険」という名前の商品でなくてもかまいません。
この前提を知らないまま、自分のケガまで手厚く付いた商品を選ぶと、必要のない補償に掛金を払うことになります。逆に、ロードバイクで長距離を走る人が賠償だけの最安プランを選ぶと、転倒して入院したときに保険金がまったく出ないという落差が生まれます。どちらが正しいというより、自分がどちらを求めているかを先に決める作業です。
国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」と東京都「自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等」が一次情報です。条例の内容は自治体ごとに違うので、住んでいる地域と走る地域の両方を確認してください。

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入口は「単独ルート」と「特約ルート」の2つしかない
入り方は大きく2通りです。ひとつは自転車保険という商品単体で契約する単独ルート。もうひとつは、いま入っている自動車保険・火災保険・共済に個人賠償責任の特約を足す特約ルートです。この2つは値段の桁が違うので、どちらの土俵で比べているのかを混ぜないことが大事になります。
単独ルートの掛金は、公式ページで確認できる範囲では年1,770円から。誰でも入れて、その保険だけで条例の要件を満たします。特約ルートは月110円から200円程度で、こくみん共済 coop のマイカー共済に自転車賠償責任補償特約を付けると月払110円、住まいる共済に個人賠償責任共済を付けると月払200円(コンクリート造は275円)です。数字だけ見れば特約ルートが安く見えます。
ただし特約ルートには「本体の契約を持っていること」という条件が付きます。こくみん共済 coop の個人賠償プラスは月額掛金200円ですが、公式ページには「単独での加入はできません」と明記されています。都道府県民共済の個人賠償責任保険も、生命共済・傷害保障型共済・新型火災共済のいずれかに加入していることが条件です。車も持っていない、共済にも入っていないという人にとっては、特約ルートの月110円は手の届かない数字になります。
個人賠償責任保険=日常生活で他人にケガをさせたり他人のモノを壊したりして、法律上の損害賠償責任を負ったときに保険金が出る補償。自転車事故だけでなく、飼い犬が人をかんだ、階下に水漏れさせた、といった事故も対象になります。条例が求めているのはこの部分で、「自転車保険」という名前かどうかは関係ありません。
月払の安さに引っ張られると年間総額を見誤る
最安を探すときに起きやすい失敗が、月払の表示額だけで比べてしまうことです。au損保のBycleは本人タイプ・ブロンズコースが月払340円ですが、同じ内容を一時払(1年一括)にすると3,810円です。月払を12回続けた場合と一時払では金額が変わるため、「月340円だから年4,000円くらいだろう」という感覚で比べると、他社の年額表示と噛み合いません。
原因は、月払と一時払・年払が別建ての料金になっている商品が多いことにあります。対策はシンプルで、比較するときは必ず「1年間でいくら払うか」に揃えることです。本記事の比較表も、公式が年額を示している商品は年額、月払しか示していない商品は月額と明記して並べています。
もうひとつ、契約年数でも変わります。Bycleは2年契約なら1年契約(一時払)と比べて保険料が約5%おトクと公式に書かれており、本人タイプ・ブロンズコースの2年契約は7,230円、家族タイプ・ブロンズコースの2年契約は13,450円です。長く乗り続ける前提なら2年契約が効きますが、途中で自転車をやめる可能性があるなら1年で区切ったほうが動きやすくなります。
単独で入れる最安は年1,770円|サイクル安心保険プランA
1,770円の内訳は年会費30円+運営費370円+保険料1,370円
単独で入れる商品でいちばん安いのは、一般財団法人全日本交通安全協会が保険契約者となっている「サイクル安心保険」のプランA(自転車事故補償コース・ベーシック・個人向け)です。Web申込みの年間掛金は1,770円。公式パンフレットには、この掛金に自転車会員の年会費30円、制度運営費370円、損害保険料1,370円が含まれると明記されています。
制度運営費とは、事務手続きやパンフレット作成など、この保険制度の運営上必要な費用のことです。純粋な保険料は1,370円で、残りが会員制度の維持費という構造になっています。引受保険会社は損害保険ジャパンで、保険期間は1年間・団体割引30%・一時払です。
この「団体割引30%」が、単独商品としては例外的に安くなっている理由です。全日本交通安全協会という大きな団体の契約にぶら下がる形なので、個人で損保と直接契約するより保険料が抑えられます。会員制度の年会費が30円という設定も、掛金を押し上げない範囲に収められています。
申込み方法によって掛金が変わる点には注意が必要です。郵送で申し込むと制度運営費が570円になり、年間掛金は1,970円になります。最安を狙うならWeb申込み一択です。更新は、申し出がない限り1年ごとに自動継続されます。
車も持っていない、火災保険の特約も付けていない、とにかく条例の要件を満たしたい——という人。年1,770円で賠償1億円と示談交渉サービスが家族全員に及びます。自分のケガの補償は薄いので、通勤通学で毎日乗る人や長距離を走る人は、後述のプランDや傷害補償が厚い商品と見比べてから決めてください。
賠償1億円と示談交渉サービスが家族全員に及ぶ
プランAの賠償責任は、1回の事故につき1億円まで。ここに示談交渉サービス(国内のみ)が付きます。そして重要なのが被保険者の範囲で、賠償責任については加入者本人だけでなく、配偶者、同居の親族、別居の未婚の子までが対象です。公式パンフレットにも「どのプランもご家族全員補償します!」と書かれています。
年1,770円で世帯の賠償をまとめて見られるのは、単独商品としてはかなり珍しい設計です。たとえば子どもが自転車で歩行者にぶつかった場合も、加入者本人の契約でカバーされます。家族の人数が増えても掛金は変わりません。
示談交渉サービスは、賠償事故を起こしたときに損保ジャパンが相手方との交渉を引き受けてくれる仕組みです。パンフレットには、サービスの提供にあたっては被保険者および損害賠償請求権者の同意が必要と注記されています。相手が交渉に応じない場合など、使えないケースがある点は押さえておいてください。
加入できるのは、国内で自転車を利用する人およびその保護者など。FAQによれば加入者は16歳以上で、16歳未満の場合は親権者が加入者となり、本人を被保険者として登録します。上限年齢の設定がないので、シニア層でも同じ掛金で入れます。詳細は全日本交通安全協会・損保ジャパンの公式案内ページで確認できます。
自分のケガは死亡・後遺障害50万円だけという割り切り
安さの代償は傷害補償の薄さです。プランAで本人に支払われるのは死亡・後遺障害保険金50万円のみ。入院保険金も通院補償もありません。しかも傷害補償の被保険者は「本人のみ」で、家族のケガは補償されません。賠償は家族全員、ケガは本人だけ、という非対称な設計です。
さらに、プランAの傷害補償は自転車に起因したケガだけが対象です。歩いているときに車にはねられた、といった自転車以外の交通事故は対象外になります。ここを広げたいなら、後述のプランD以降か、他社の交通傷害型の商品を見ることになります。
この割り切りが成立するのは、健康保険や勤務先の団体保険、生命保険の医療特約などで自分のケガの備えがすでにある人です。逆に、そうした備えが何もない学生や、自転車で走る距離が長い人にとっては、50万円だけでは頼りない場面が出てきます。
掛金を上げれば傷害補償も厚くなります。同じ自転車事故補償コースのプランBはWeb申込みで年2,770円、プランCは4,660円。プランB・Cの死亡・後遺障害保険金は1,000万円で、プランCは本人の配偶者やその他親族も傷害補償の対象になります。1,770円との差をどう見るかは、自転車に乗る頻度次第です。
年2,000円で賠償3億円になる、見落とされがちなプランD

わずかな上乗せで1億円が3億円に変わる
実は、サイクル安心保険にはもうひとつの系統があります。プランD・E・Fの「交通傷害ワイド補償コース」です。このうちベーシックのプランDは、Web申込みの年間掛金が2,000円。プランAの1,770円に対してわずかな上乗せですが、賠償責任の保険金額は1回の事故につき3億円まで上がります。示談交渉サービスも付き、賠償の被保険者が家族全員という点も同じです。
意外と知られていないのが、この価格帯です。自転車保険のランキング記事では「3億円プラン」というと4,000円台から5,000円台の商品が並びがちですが、公式パンフレットの掛金表を見る限り、年2,000円で3億円に到達するルートが存在します。プランDの損害保険料は1,600円で、ここに年会費30円と制度運営費370円が乗る構造です。
プランDの傷害補償は、プランAと同じく本人の死亡・後遺障害保険金50万円のみ。家族のケガは補償されず、通院による補償もありません。ただし対象となる事故の範囲は広がり、自転車事故に加えてその他の交通事故によるケガも対象になります。付帯特約は交通傷害危険のみ補償特約と、入院保険金支払限度日数変更特約(180日)です。
郵送で申し込むと2,200円になる点はプランAと同じ構造です。賠償額を厚くしたいがケガの補償は最低限でいい、という条件に合うなら、掛金あたりの賠償額はかなり効率がいい選択肢になります。
1億円では足りないと言われる根拠を数字で見る
では、1億円と3億円はどう考えればいいのでしょうか。よく引かれるのが、都道府県民共済の個人賠償責任保険のパンフレットにも掲載されている判例です。男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路で歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となりました。判決認容額は9,521万円(神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)です。
この金額は1億円の枠にぎりぎり収まります。ただし判決認容額は判決文で加害者が支払いを命じられた金額であり、訴訟費用や遅延損害金まで含めた実際の負担はこれとは別です。1億円という枠は「足りることもあれば、際どいこともある」水準だと考えるのが実態に近いところです。
一方で、3億円あれば安心だと断言することもできません。賠償額は事故の状況、被害者の年齢や収入、後遺障害の等級などで大きく変わります。保険金額はあくまで上限であって、上限が大きいほど保険料が上がる代わりに、上限に張り付くリスクが減るという関係です。年間の掛金がほとんど変わらないまま上限を3倍にできるなら検討する価値はある、という程度の温度感で見ておくのが妥当でしょう。
サイクル安心保険はプランA〜Fの6種類があり、AからCが自転車事故補償コース(賠償1億円)、DからFが交通傷害ワイド補償コース(賠償3億円)です。申込書でプランを選ぶ形式なので、賠償額を重視するならD・E・Fの列を見ていることを確認してください。公式パンフレットには「期間中のプラン変更はできません」と記載があります。
プランD・E・Fの上位は掛金が跳ねる
交通傷害ワイド補償コースの上位プランも見ておきます。プランEはWeb申込みで年3,800円(郵送4,000円)、プランFは5,870円(郵送6,070円)。損害保険料はプランEが3,400円、プランFが5,470円です。プランE・Fの死亡・後遺障害保険金は500万円、入院保険金日額は6,000円で、プランFは家族の死亡・後遺障害保険金300万円も付きます。
賠償額はD・E・Fで共通の3億円なので、掛金の差はすべて傷害補償の厚みに使われています。賠償だけが目的ならプランDで止めるのが合理的で、ケガの備えも同時に作りたいならE・Fを検討する、という切り分けになります。
注意点として、プランD・Eの傷害補償の被保険者は本人のみです。家族の傷害まで対象にしたいならプランCかプランFになり、掛金は4,660円か5,870円まで上がります。「家族全員」という言葉が賠償を指しているのか傷害を指しているのかで、必要な掛金が3倍近く変わるので、パンフレットの該当欄を必ず確認してください。
家族全員を年2,630円で|サイクルパートナーという選択
本人タイプ2,020円、家族タイプ2,630円
もうひとつ、掛金あたりの賠償額が大きい単独商品があります。サイクルベースあさひを取扱代理店、au損害保険を引受保険会社とする「サイクルパートナー」です。公式ページの保険料は、本人タイプが月払180円・一時払(1年契約)2,020円、家族タイプが月払250円・一時払2,630円となっています。
家族タイプが2,630円で、個人賠償責任補償は2億円。しかも保険金額は本人タイプ・家族タイプ共通と明記されているので、家族タイプにしても補償の中身は落ちません。示談代行サービス(賠償事故解決特約)も付きます。年2,630円で世帯の賠償を2億円まで見られる設計です。
ケガの補償は、死亡・後遺障害250万円、ヘルメット着用中死亡100万円、入院保険金日額2,000円。サイクル安心保険プランAの死亡・後遺障害50万円と比べると厚く、入院日額も付いています。一方で手術・通院時の補償はセットされていません。
対象となるのは「自転車に乗っている間の事故」または「自転車に乗っていないときに運行中の自転車と衝突・接触した事故」です。歩行中に走ってきた自転車にぶつけられたケースも入るので、自転車まわりに限れば守備範囲は素直です。
| 保険料 | 本人タイプ 月払180円/一時払2,020円、家族タイプ 月払250円/一時払2,630円 |
| 個人賠償責任補償 | 2億円(自己負担額なし)/示談代行サービス付き |
| ケガの補償 | 死亡・後遺障害250万円/ヘルメット着用中死亡100万円/入院保険金日額2,000円 |
| 対象年齢 | 被保険者は0歳〜74歳(家族タイプは被保険者本人が74歳まで)、契約者は18歳以上 |
家族タイプの範囲と、0歳から入れるという強み
あさひの加入条件ページによると、被保険者は0歳から74歳まで。契約者は18歳以上が条件です。0歳から対象という設定は、子どもを前後に乗せる電動アシスト自転車を使う世帯にとっては現実的な意味があります。子ども自身が自転車に乗り始める年齢になっても、そのまま同じ契約で続けられます。
家族タイプの被保険者の範囲は、申込画面で指定した本人、本人の配偶者、その他親族です。人数による掛金の変動はないため、3人家族でも5人家族でも年2,630円。1人あたりで割ると、人数が多い世帯ほど負担は下がっていきます。
注意したいのは、本人タイプでは家族が自転車事故を起こした場合が補償対象外になることです。世帯で1本にまとめるつもりなら、180円と250円の差をケチらず家族タイプを選んでおくほうが後で困りません。月払の差はわずかですが、カバー範囲は世帯全体と個人で別物になります。
公式情報はau損保「サイクルパートナー」のページにあります。サイクルパートナーは、株式会社あさひを取扱代理店、au損害保険株式会社を引受保険会社とした、自転車搭乗中等のみ補償特約付きスタンダード傷害保険のプラン名です。

家族で自転車に乗っているけれど、保険は誰の名義で、どこまでカバーされているのか。この質問に即答できる人は多くありません。夫婦と子ども2人なら自転車は3台も4台も…
手術・通院が出ない割り切りと、Bycleとの距離
サイクルパートナーが安い理由は、補償を自転車まわりに絞り、手術・通院の補償を外しているからです。同じau損保でも、Bycleは自転車事故以外の交通事故まで補償し、自転車ロードサービス(50km・年間4回まで無料搬送、自宅への出張修理にも対応)が全コースに付きます。その分、本人タイプ・ブロンズコースで月払340円・一時払3,810円と、掛金は上がります。
Bycleのブロンズコースは個人賠償責任補償2億円、死亡・後遺障害300万円(自転車事故は600万円)、入院保険金日額4,000円(自転車事故は8,000円)。シルバーコースになると賠償は3億円、入院保険金日額6,000円(自転車事故は12,000円)で、本人タイプ月払560円・一時払6,180円です。ゴールドコースは弁護士費用等300万円と法律相談費用5万円が加わり、本人タイプ月払1,130円・一時払12,240円になります。
家族タイプで見ると、Bycleブロンズが月払650円・一時払7,080円。サイクルパートナーの家族タイプ2,630円との差は、ロードサービスと交通事故全般の補償、そして傷害補償の厚みに使われていると考えると整理しやすくなります。出先でパンクしても押して帰るのが平気な人はサイクルパートナー、運べないと困る人はBycle、という分け方が現実的です。
すでにある保険に乗せるなら月110円から
こくみん共済 coop なら月110円から自転車の賠償が付く
ここからは特約ルートです。こくみん共済 coop の公式ページによると、各種共済に月々110円〜200円を足すことで賠償に関する保障を備えられます。いちばん安いのがマイカー共済に付ける自転車賠償責任補償特約で、月払110円。1事故につき最高1億円の賠償が付きます。
住まいる共済に個人賠償責任共済を付ける場合は月払200円(コンクリート造は275円)。こちらには示談交渉サービスが付きます。一方でマイカー共済の自転車賠償責任補償特約には示談交渉サービスがないと公式に明記されているので、同じ「月110円」でも中身は別物です。
単独商品として売られている「個人賠償プラス」は月額掛金200円で、損害賠償共済金は最高3億円。対人臨時費用として死亡時10万円、10日以上の入院時2万円、謝罪等3,000円が付き、一定の条件を満たした場合には示談交渉サービスが利用できます。被共済者は主たる被共済者、配偶者、同居の親族、別居の未婚の子、親権者・法定監督義務者および監督責任者までと広く取られています。
ただし個人賠償プラスは、公式ページに「単独での加入はできません」と書かれており、資産形成ラインを除いた各タイプと組み合わせて加入する形になります。詳しくはこくみん共済 coop「自転車に乗る人の保障」を確認してください。
都道府県民共済なら年1,800円で3億円と示談交渉
都道府県民共済の生命共済・傷害保障型共済・新型火災共済のいずれかに入っている人なら、個人賠償責任保険を年額1,800円(1か月あたり150円)で付けられます。保険金額は3億円限度で、日本国内示談交渉サービス付き。保険期間1年・団体割引30%・一時払という条件です。
補償の対象者は、1世帯の1人が加入すれば、加入者(記名被保険者)、その配偶者、記名被保険者または配偶者の同居の親族および別居の未婚の子等まで及びます。掛金は共済の掛金振替口座から共済掛金と合わせて振り替えられるので、支払い口座を別に用意する必要もありません。
補償開始日によって初年度保険料が変わるのがこの制度の特徴です。4月1日〜4月30日の申込みなら初年度保険料は1,500円、9月1日〜9月30日なら750円、1月1日〜1月31日なら150円と、年度の途中から入るほど安くなります。次年度以降は通常の1,800円に戻ります。
支払対象外の範囲も確認しておきましょう。パンフレットには、自動車等の車両の所有・使用・管理に起因する損害賠償責任と、職務の遂行に直接起因する損害賠償責任は支払えないと明記されています。仕事で自転車を使う配達業務などは、この手の個人向け特約ではカバーされないことが多いので、勤務先の保険の有無を確認してください。詳細は都道府県民共済 個人賠償責任保険の公式ページにあります。
共済本体の掛金を忘れると「最安」の計算が崩れる
ここが2つめの失敗パターンです。月150円という数字だけを見て「これがいちばん安い」と判断し、共済に新規加入したところ、本体の掛金が毎月かかることに後から気づく——という流れです。都道府県民共済の個人賠償責任保険は、生命共済等に加入していることが条件なので、本体の掛金と合わせた金額が実際の支出になります。
原因は、特約の掛金と本体の掛金が別々のページに書かれていることにあります。対策は、特約ルートを検討するときに「本体にすでに入っているか」を最初に確認することです。すでに入っているなら特約ルートが圧倒的に安く、入っていないなら単独ルートの年1,770円や2,000円のほうが総額では下になります。
もうひとつ、補償の重複にも注意が必要です。都道府県民共済のパンフレットには、補償内容が同様の契約が他にある場合、損害額によっていずれか一方の契約からは保険金が支払われない場合があると注記されています。自動車保険にすでに個人賠償責任特約が付いているのに自転車保険に入ると、二重に払って片方が使われない状態になりかねません。保険証券を一度並べて、特約の欄を確認しておいてください。
・自動車保険、火災保険、クレジットカードの付帯保険に個人賠償責任の特約が付いていないか
・勤務先や学校の団体保険で賠償責任がカバーされていないか
・特約の補償対象者に自分と家族が含まれているか(別居の未婚の子まで及ぶかは商品ごとに違います)
・仕事で自転車を使う場合、職務中の事故が対象外になっていないか
主要ルートを同じ物差しで並べた比較表
年間の支出と賠償額を横に並べる
ここまでの数字を、自転車の教科書で各社・各団体の公式ページとパンフレットから拾い、同じ形式に揃えました。年額が公表されているものは年額、月額しか出ていないものは月額と明記しています。いずれも本人1人または世帯単位の最安構成です。
| ルート | 掛金・保険料 | 賠償額/示談 | 単独加入 |
|---|---|---|---|
| サイクル安心保険 プランA | 年1,770円(Web) | 1億円/あり | できる |
| サイクル安心保険 プランD | 年2,000円(Web) | 3億円/あり | できる |
| サイクルパートナー 本人 | 年2,020円(一時払) | 2億円/あり | できる |
| サイクルパートナー 家族 | 年2,630円(一時払) | 2億円/あり | できる |
| ちゃりぽ スタンダード | 年2,900円/月260円 | 1,000万円/記載なし | できる |
| セブン-イレブン お1人様 | 年3,220円 | 3億円/あり | できる |
| au損保 Bycle 本人ブロンズ | 年3,810円/月340円 | 2億円/あり | できる |
| 都道府県民共済 個人賠償 | 年1,800円/月150円 | 3億円/あり | 共済加入が条件 |
| こくみん共済 個人賠償プラス | 月200円 | 3億円/条件付きあり | 単独加入不可 |
| マイカー共済 自転車特約 | 月110円 | 1億円/なし | マイカー共済が条件 |
示談交渉サービスの有無が値段以上に効く
表を横に見ると、掛金の差以上に目立つのが示談交渉サービスの有無です。これは事故の相手方との交渉を保険会社が代行してくれる仕組みで、付いていないと自分で相手と金額の話をすることになります。マイカー共済の自転車賠償責任補償特約は月110円と安い代わりに、このサービスがありません。
ちゃりぽのスタンダードプランは年2,900円・月260円と安価ですが、個人賠償責任が最高1,000万円で、公式の比較表では示談交渉サービスの記載がありません。同じちゃりぽでも賠償3億プランは年4,590円、家族プランは年10,290円で、こちらには示談交渉サービスが付き、賠償も最高3億円に上がります。年齢制限は賠償3億プラン・家族プランが70才未満、スタンダードプランは年齢制限なしという設定です。
賠償の金額だけを見て安いプランを選ぶと、示談の場面で困ることがあります。とはいえ、示談交渉サービスにも「被保険者および損害賠償請求権者の同意が必要」といった条件が付くのが一般的で、相手が交渉に応じないケースでは使えません。あくまで負担を減らす仕組みであって、あらゆる事故を任せられるものではないと理解しておいてください。
1億円・2億円・3億円をどう読むか
賠償額の選び方には正解がありません。判例で1億円近い認容額が出ている以上、1億円は「ぎりぎり届くかもしれない」水準です。2億円・3億円は上限に余裕を持たせる設計で、そのぶんの保険料を払う判断になります。年1,770円のプランAと年2,000円のプランDのように、差が小さいなら上限の大きいほうを選ぶ理由は作りやすくなります。
一方、セブン-イレブンの自転車向け保険は、お1人様プランが年3,220円で日常生活賠償保険金は最高3億円。傷害死亡保険金1,000万円、傷害入院保険金日額8,000円、入院中手術8万円、入院中以外の手術4万円と、ケガの補償が厚いのが特徴です。ご夫婦プランは3,980円、ご家族プランは5,890円で、引受保険会社は三井住友海上火災保険。ネットで予約入力してから店頭のマルチコピー機で手続きする方式です。
楽天サイクル保険は、公式によると2026年11月1日以降を保険始期とする場合の保険料が3,290円〜16,380円、2026年10月31日以前を始期とする場合が3,000円〜20,320円。個人賠償責任保険金額は1億円で、日本国内の示談交渉サービスが自己負担額なしで付きます。本人は18歳以上、その他の被保険者は69歳未満という条件です。保険料の支払いで1%分の楽天ポイントが貯まります。
| こんな人 | 検討しやすい選択 | 年間の目安 |
|---|---|---|
| 一人暮らし・条例対応だけしたい | サイクル安心保険 プランA(Web申込み) | 1,770円 |
| 賠償の上限を厚くしたい | サイクル安心保険 プランD(Web申込み) | 2,000円 |
| 子どもも含めて世帯でまとめたい | サイクルパートナー 家族タイプ | 2,630円 |
| すでに共済に入っている | 都道府県民共済の個人賠償責任保険を追加 | 1,800円 |
| 出先のトラブルも助けてほしい | au損保 Bycle(ロードサービス付き) | 3,810円〜 |
安さだけで選ぶと外す3つの落とし穴
年齢の壁は商品ごとにバラバラ
最安を探していて最後につまずくのが年齢条件です。商品ごとに上限がバラバラで、サイクルパートナーは被保険者0歳〜74歳、ちゃりぽの賠償3億プラン・家族プランは70才未満、楽天サイクル保険は本人18歳以上でその他の被保険者は69歳未満となっています。au損保では75才以上の場合、Bycle Sというシニアプランのみの案内になります。
Bycle Sは加入可能年齢が70才〜89才で、月々760円。個人賠償責任補償は最大2億円で、示談代行サービスが付きます。若い世代向けの商品より掛金は上がりますが、年齢で断られない選択肢として用意されている形です。
年齢制限がない商品もあります。サイクル安心保険は加入者が16歳以上(16歳未満は親権者が加入者)という条件だけで、上限年齢の設定がありません。ちゃりぽのスタンダードプランも年齢制限なしです。高齢の親の分をどうするかという場面では、この条件の有無が選択肢を絞ります。
家族タイプを選ぶ場合、「誰の年齢で判定するのか」も要確認です。サイクルパートナーの家族タイプは被保険者本人が74歳までという条件で、申込画面で本人に指定する人を誰にするかで結果が変わります。

TSマークは「安い自転車保険」とは仕組みが違う
点検整備を受けると付いてくるTSマークも、条例が認める備えのひとつです。ただし仕組みが他の保険と違います。自転車安全整備店で有料の点検整備を受けると、その自転車に貼られたマークに保険が付帯する形で、有効期間はマークに記載されている点検基準日から1年間です。
補償内容はマークの色で変わります。青色は賠償責任補償が死亡・重度後遺障害(1〜7級)1,000万円、傷害補償が死亡・重度後遺障害(1〜4級)30万円と15日以上の入院1万円。赤色は同じ範囲の賠償責任補償が1億円、傷害補償が100万円と15日以上の入院10万円で、被害者見舞金として15日以上の入院で10万円が付きます。緑色は賠償責任補償が「全ての人身事故」で1億円、傷害補償が50万円と15日以上の入院5万円です。
ここで見落としやすいのが、青色と赤色の賠償責任は「死亡・重度後遺障害(1〜7級)」に限られるという点です。相手が骨折して治った、というような事故では賠償が出ません。全ての人身事故を対象にしているのは緑色だけで、しかも自転車安全整備店1店舗につき青色・赤色・緑色のいずれか1種類しか扱っていません。
また、TSマークは自転車に付くもので、人に付くものではありません。点検整備料は店舗ごとに異なり、公式に定められた金額はありません。賠償の備えとしては他のルートと併用する前提で考えたほうが安全です。一次情報は公益財団法人日本交通管理技術協会のTSマーク公式ページにあります。
商品そのものが終わることがある
最後の落とし穴は、商品の入れ替わりです。東京海上日動のeサイクル保険は、公式ページによると2025年9月30日をもって販売を終了しました。新規契約を希望する人には、トータルアシストからだの保険(サイクル)とトータルアシストからだの保険(傷害定額)が案内されており、いずれも2025年10月1日以降の始期契約が対象です。トータルアシストからだの保険(サイクル)は月々410円からと公式に記載されています。
自転車保険は加入義務化の流れで商品数が増えた分、統廃合も起きています。数年前の比較記事に載っていた商品名でそのまま検索すると、販売が終わっていることがあります。契約前には公式サイトで「販売終了」の告知が出ていないかを確認してください。
更新のタイミングも同じです。都道府県民共済の個人賠償責任保険は、次年度以降に保険料が変更となることがあるとパンフレットに書かれています。安さで選んだ商品が数年後も同じ値段とは限らないので、更新案内には目を通しておきましょう。
まとめ
最初の一歩としておすすめしたいのは、保険証券やアプリを開いて「個人賠償責任」の4文字を探すことです。自動車保険、火災保険、クレジットカードの付帯保険、勤務先や学校の団体保険——このどれかにすでに付いていれば、新しく契約する必要はありません。付いていないことが確認できたら、サイクル安心保険のWeb申込みページで年1,770円のプランAと年2,000円のプランDを見比べて、賠償の上限をどこに置くかを決める。世帯でまとめたい人はサイクルパートナーの家族タイプ2,630円も並べてみる。ここまでで、自分にとっての最安はほぼ決まります。所要時間は30分もかかりません。
自転車保険は、入った瞬間には何も起きない買い物です。それでも、歩行者と接触したその日に「入っておいてよかった」と思える種類の支出でもあります。値段の桁が小さいぶん、どこで妥協して、どこを譲らないかをはっきりさせておくと、あとで見直すときにも迷いません。
※本記事の掛金・補償内容は各社・各団体の公式ページおよびパンフレットの記載に基づくものです。保険料や補償内容は改定されることがあり、条例の内容も自治体ごとに異なります。加入の判断にあたっては、必ず各商品の公式サイトと重要事項説明書、お住まいの自治体の公式情報をご確認ください。

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