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マウンテンバイクで少し長めに走ると、手のひらの付け根がしびれる。下りで握り込むと指が疲れて、後半はブレーキレバーを引く力が残っていない。そういう悩みの原因は、フォークでもサドルでもなく、いちばん最後に手が触れているグリップにあることが少なくありません。
結論を先に言ってしまうと、マウンテンバイクのグリップ選びで見るべき数字は3つだけです。太さ(外径)・長さ・固定方式。この3つが合っていれば、価格が1,980円でも6,380円でも、手の痛みはかなり減ります。逆にここがずれていると、高いグリップに替えても「握りにくくなっただけ」で終わります。
この記事では、エルゴン・DMR・ODI・トレックの現行モデルをメーカー公式のスペック値で横並びにし、29.8mmから32mmまで並ぶ太さの選び分け、130mmから137mmまである長さの意味、そして自分で交換するときの推奨トルクまで、順番に整理していきます。店に頼んだ場合の工賃も、公式の料金表から具体的な数字で示します。
・ロックオンと差し込み式の違いと、初心者がどちらを選ぶべきか
・29.8mm/31.3mm/32mmという太さの違いが、手のどこに効くのか
・エルゴン・DMR・ODI・トレックの現行モデルをメーカー公式値で比較
・3mm六角レンチと推奨トルク3Nmで完結する交換手順と、店に頼んだときの工賃880円
マウンテンバイクのグリップを替えると、手のどこが楽になるのか

グリップは、自転車の中で体と車体が接している3点(ハンドル・サドル・ペダル)のうち、いちばん手軽に、いちばん安く替えられる部品です。それでいて、走行中の疲労の出方を大きく左右します。ここではまず、なぜ替えると変わるのかを分解しておきます。
手がしびれるのは、握力で上半身を支えてしまっているから
ハンドルにかかる荷重は、本来なら手のひら全体で面として受けるものです。ところが細いグリップや硬くなったグリップだと、接触面積が稼げず、手のひらの一部と指の力で車体を押さえ込む格好になります。これが長時間続くと、手のひらの付け根や小指側に負担が集中します。
エルゴンはこの点を明確に設計目的として挙げており、公式の取扱説明書には、個々の乗車姿勢に合った角度調整によって「手の血液循環を改善し、手の痛みを予防するなどの効果を発揮します」と記載されています。つまりグリップは、クッション材であると同時に、手のひらを置く「台」でもあるという考え方です。
使いどころとしては、片道の走行距離が伸びてきた人、下りで腕がパンプする人、通勤通学でマウンテンバイクを使っている人に効きます。一方で、注意点もあります。グリップを替えても、ハンドル位置そのものが低すぎたり遠すぎたりして体重が手に乗っている場合、しびれは完全には消えません。エルゴンの説明書も、痛みやしびれが取れない場合は専門店で自転車全体のフィッティングを含めて相談することを推奨しています。
太さが変わると、指のかかり方と握力の使い方が変わる
グリップの外径は、現行モデルだけでも幅があります。DMRのDEATH GRIP 2はTHINが29.8mm、THICKが31.3mmの2サイズ展開。トレックのLine Comp MTBグリップセットは公式スペックで外径32mmです。数字にすると小さな差ですが、指が回り込む角度が変わるため、握った感触ははっきり変わります。
太いほうが手のひらの接触面積を稼げて、少ない握力でも保持しやすくなります。細いほうは指がしっかり回り込むので、バイクを振ったときの操作の一体感が出ます。どちらが優れているという話ではなく、手の大きさと走り方で決まる相性の問題です。ODIがROGUE V2.1 LOCK-ONの紹介で「手の大きい方におススメ」と書いているように、メーカー側もモデルごとに想定する手のサイズを分けています。
注意点として、太いグリップは重量が増える傾向があります。トレックのLine Comp MTBグリップセットは128.0g、エルゴンのGA3は115g(ペア)と、公表値でも差が出ます。とはいえグリップの重量差は車体全体から見れば小さく、軽さを優先して手が痛くなるなら本末転倒です。まずは手に合う太さ、次に重量という順番で考えてください。
880円の工賃で試せる、いちばん安いポジション変更
ポジションを変えたいとき、ステムやハンドルバーを交換すると費用がかさみます。サイクルベースあさひの公式工賃表では、MTB・クロスバイクのハンドルバー交換が4,180円、フラットハンドルのステム交換が3,740円。これに対してグリップ交換は880円で、作業時間の目安は10分〜と記載されています。
つまりグリップは、ポジション調整の中でもっとも失敗したときの損失が小さい入口です。しかも自分でやれば工賃はかかりません。マウンテンバイクを買ったばかりで「なんとなく手が疲れる」という段階なら、いきなりハンドル周りを組み替えるより、まずグリップから試すほうが合理的です。
デメリットも正直に書いておくと、グリップ交換だけで解決しない症状もあります。ブレーキレバーの角度が手首をひねる位置にある、ハンドル幅が広すぎて肩が開いている、といったケースです。こうしたときはグリップ単体ではなくレバー位置やバー幅の見直しが必要になるので、作業に不安があれば自転車店に相談してください。
ハンドル周りで迷ったら、まずグリップから手を付けるのが定石です。サイクルベースあさひの公式工賃表では、MTB・クロスバイクのグリップ交換が880円、ハンドルバー交換が4,180円、ステム交換が3,740円。もっとも安く、もっとも短時間で試せるのがグリップです。

クロスバイクに1年ほど乗ると、必ずと言っていいほど手が「グリップの相談」を始めます。表面が白く粉を吹いてきた、握るとベタつく、10kmを過ぎたあたりで手のひらの…
ロックオンと差し込み式、最初の1組はどちらを選ぶか
マウンテンバイク用グリップは、固定方式で大きく2つに分かれます。ここを理解しないまま買うと、「取り付けられない」「すぐ回る」というトラブルになります。価格差の理由もここにあります。
ロックオン=グリップの内側に硬い芯(コア)が入っていて、アルミや樹脂のリングをボルトで締めてハンドルバーに固定する方式。差し込み式(スリップオン)=ゴムだけの筒状で、バーに押し込んで摩擦で保持する方式。エルゴンの取扱説明書によると、グリップを取り付けるハンドルバーは直径22.2mmの業界標準を満たしているものを使います。
ロックオンは「回らないこと」にお金を払うパーツ
ロックオンの利点は、雨でも汗でもグリップが回らないことです。マウンテンバイクは下りでハンドルに体重が乗り、手が濡れる場面も多いので、グリップが空転すると操作そのものが怖くなります。ボルトで固定しているため、脱着も六角レンチ1本で完結します。
実売価格は、日本総輸入元のミズタニ自転車が公開しているODIのラインナップで見ると、ELITE PRO V2.1 LOCK-ONが4,620円、ROGUE V2.1 LOCK-ONが4,730円、D3O GRIPコンパウンドを使うVANQUISH V2.1 LOCK-ONが6,380円。エルゴンのGA3は4,840円、GE1 Evoは5,280円です。差し込み式より高いのは、コアとクランプという部品が増えているためです。
使いどころは、下り系・トレイル系はもちろん、通勤で雨天走行がある人にも向きます。注意点は2つ。ひとつはクランプの分だけ重くなること、もうひとつは締めすぎるとバー側を傷める可能性があることです。DMRはDEATH GRIP 2のロックリングを2Nmで締めるよう指定しており、エルゴンのGA3は推奨トルク3Nm。どちらも「手ごたえで思い切り締める」数値ではありません。
差し込み式が今も残っている理由は、軽さと価格
差し込み式はゴムだけの構造なので軽く、値段も抑えられます。ODIのFLANGELESS LONG NECKは1,980円で、ワッフル模様の定番モデルとして今も現行です。クロスカントリー寄りで軽さを詰めたい人や、複数台に同じグリップを入れたい人には十分な選択肢になります。
取り付けは、バーの表面とグリップ内側を清掃してから押し込むのが基本です。滑りをよくするために水やアルコール系のクリーナーを少量使う方法が一般的ですが、揮発したあとにしっかり保持されているかを必ず確認してください。エルゴンの説明書は、グリップに石油ベースの製品や溶剤、油やグリスを使わないよう明記しています。滑らせるためのつもりで油分を使うと、保持力が戻りません。
デメリットははっきりしています。経年でゴムが痩せると回りやすくなること、そして脱着のたびに破れるリスクがあることです。特にバーエンドバーやスマートフォンマウントを同時に使うと、グリップを抜き差しする機会が増えます。そういう構成なら、最初からロックオンを選んだほうが長期的には扱いやすくなります。
失敗パターン①:差し込み式を接着剤で固定して、次の交換で詰む
よくある失敗が、回るのが怖くて差し込み式グリップを瞬間接着剤や強力な両面テープで固定してしまうケースです。その場は止まりますが、次に交換するときグリップをカッターで切り裂くことになり、さらにバー表面に残った接着剤を落とす手間まで増えます。カーボンバーの場合は、削る作業そのものがバーを傷めるリスクになります。
原因は、清掃不足のまま差し込んでいることがほとんどです。バー側に古いゴムの粉や油分が残っていると、いくら押し込んでも密着しません。対策は単純で、取り付け前にバーのグリップ取付部をアルコールまたは脱脂洗浄剤で洗浄すること。これはエルゴンの取扱説明書でも、取り付け手順の2番目として明記されている工程です。
それでも回るなら、固定方式を変えるのが正解です。ロックオンなら、ボルトを締めた時点で物理的に回りません。接着剤で延命するより、1,980円の差し込み式から4,620円のロックオンに移行したほうが、結果的に手間もお金も少なく済みます。
グリップシフト(回して変速するタイプ)が付いている車体は、シフター側のスペースが短く、左右で必要な長さが違います。通常のMTB用グリップがそのまま入らないことがあるので、購入前にバーの空きスペースを測ってください。DMRはDEATH GRIP 2について、片側130mm以上のバーの空き幅が必要としています。
太さ・長さ・形状、自分に合う1本を絞り込む3つの軸

メーカーの公式スペックで比べられるのは、主に外径・長さ・重量の3つです。カタログの見方さえ分かれば、店頭で握れないネット通販でも失敗はかなり減らせます。
29.8mmか31.3mmか、太さは手の大きさと走り方で決める
DMRのDEATH GRIP 2は、同じ形状でTHIN 29.8mmとTHICK 31.3mmの2サイズを用意しています。同一モデルで太さだけを選べるので、太さの効果を比べる基準として分かりやすい製品です。トレックのLine CompやエルゴノミックCompは外径32mmで、握り比べると太さのグループが違うことが分かります。
選び方の目安はシンプルです。指が余って親指と中指が重なってしまうなら細め、逆に指先だけで引っかけている感覚が強いなら太めが合います。ODIがROGUE V2.1 LOCK-ONに「手の大きい方におススメ」という説明を付けているのも同じ発想で、手が大きい人が細いグリップを使うと、握り込む量が増えて前腕が先に疲れます。
注意点は、太さの好みが走るステージで変わることです。下りを多く走る人は、ブレーキを長く引く関係で少し細めのほうが指に力を伝えやすいと感じることがあります。逆に舗装路のロングライドが主体なら、太めで面圧を分散したほうが手が楽です。1台で両方やる人は、まず中間の太さから入り、不満の方向を確かめてから次を選ぶのが手堅い進め方です。
130mmから137mm、長さはバーの空きスペースで決まる
グリップの長さは製品ごとに違います。公式値で見ると、ODI ELITE PRO V2.1 LOCK-ONが130mm、エルゴンGA3が134mm、DMR DEATH GRIP 2とトレックLine Compが135mm、エルゴンGE1 Evoが136mm、エルゴンGA2が137mmです。
長いほうが手の逃げ場が増え、登りで内側に持ち替えるような使い方がしやすくなります。ただし、ハンドルバーの端からシフターやブレーキレバーのクランプまでの距離が足りなければ、そもそも入りません。DMRが片側130mm以上の空き幅を条件として示しているのは、この物理的な制約があるためです。
実際の手順としては、購入前にバーの端からシフター内側までの距離を定規で測っておけば確実です。余裕があればレバー類を少し内側にずらして対応できますが、レバー位置は操作性に直結するので、極端に寄せるのは避けてください。エルゴンの取扱説明書も、グリップを差し込む前にシフトレバーとブレーキレバーのクランプボルトを緩めて内側に寄せる手順を示しています。
エルゴノミック形状は「角度」で完成する
エルゴンのGA3のような翼状の受けが付いた形状は、手のひらを面で支えるのが狙いです。ただし、この形は取り付け角度が合っていないと逆効果になります。GA3の取扱説明書では調整範囲が最低-10°から最高+20°と示されており、手首に負担がかからない自然な角度に合わせてから固定するよう指示されています。
角度を決めるコツは、実際に乗車姿勢を取った状態で手を置き、手首がまっすぐ伸びる位置を探すことです。エルゴンは、最適な角度が左右で異なることがあるとも書いています。左右対称にこだわるより、それぞれの手が楽な位置を優先するほうが理にかなっています。
一方で、フラットな円筒形のグリップ(DMR DEATH GRIP 2やODI ELITE PRO V2.1 LOCK-ONなど)は、角度の概念がないぶん取り付けが簡単で、下りで手の位置を細かく変える走り方に向いています。トレイルの中でグリップの上をスライドさせるような操作が多い人は、翼状の受けがむしろ邪魔になることがあります。ここは走り方で素直に分かれる部分です。
| 目的・シーン | おすすめの方向性 | 該当モデル例 |
|---|---|---|
| 通勤・街乗りで手のしびれを減らす | 手のひらを面で支えるエルゴノミック形状 | ERGON GA3(4,840円) |
| トレイルの下りで握り込む | 柔らかめラバーの円筒形ロックオン | ERGON GE1 Evo(5,280円)/DMR DEATH GRIP 2(4,400円) |
| 手が大きくて指が余る | 太めの外径を選ぶ | ODI ROGUE V2.1 LOCK-ON(4,730円) |
| 費用を抑えて交換を試す | 差し込み式、または安価なロックオン | ODI FLANGELESS LONG NECK(1,980円)/トレック Line Comp(2,900円) |

現行モデルをメーカー公式値で横並びにする
ここからは、日本で正規に流通している現行モデルを、メーカー公式・日本総輸入元の公表値でそろえて比較します。以下の数値はいずれも各社公式ページの記載に基づくもので、自転車の教科書が公式スペックを収集して整理したものです。
| モデル | 長さ/外径 | 重量 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| ERGON GA3 | 134mm/記載なし | 115g(ペア) | 4,840円 |
| ERGON GA2 | 137mm/記載なし | 110g(ペア) | 4,400円 |
| ERGON GE1 Evo | 136mm/記載なし | 110g(ペア) | 5,280円 |
| DMR DEATH GRIP 2 | 135mm/29.8mm・31.3mm | 100g(ペア) | 4,400円 |
| ODI ELITE PRO V2.1 LOCK-ON | 130mm/記載なし | 記載なし | 4,620円 |
| トレック Line Comp MTBグリップセット | 135mm/32mm | 128.0g | 2,900円 |
| トレック エルゴノミック Comp MTBグリップセット | 135mm/32mm | 133.0g | 3,500円 |
エルゴン:手首の負担を減らす形状と、角度調整という考え方
エルゴンのMTB向けグリップは、GA2・GA3・GE1 Evoの3本柱です。公式値ではGA2が110g(ペア)・長さ137mm・4,400円、GA3が115g(ペア)・長さ134mm・4,840円、GE1 Evoが110g(ペア)・長さ136mm・5,280円。いずれもカーボンハンドルバーに使用可能で、エンドプラグが付属します。
キャラクターははっきり分かれます。GA3は手首の負担を軽減する形状で、公式はトレイルライド・クロスカントリー・ツーリングを用途として挙げています。GA2はオールマウンテン向けで、ラバーの厚みやパターンを部位によって変化させた設計。クランプを内側に配置することで、グリップの端部までを握ることができるとされています。GE1 Evoは柔らかめのラバー素材と新しいグリップパターンで、長時間の激しい下りでの手の疲労を最小限に抑える方向に振られています。
注意点は、形状が決まっているぶん角度合わせが必須になることです。GA3の説明書には調整範囲が最低-10°から最高+20°と記載されており、ここを詰めないと本来の性能が出ません。保証は購入日から2年間で、購入日の日付が入った領収書が必要と明記されているので、レシートは残しておいてください。

クロスバイクで片道10kmを走ると、後半で小指側がジンとしびれてくる。信号待ちのたびに手を開いてグーパーしている。そんな状態で自転車店に来るお客さんに、まず勧め…
DMR DEATH GRIP 2:太さを選べる、下り系の定番
DMRのDEATH GRIP 2は、DHライダーのブレンダン・フェアクローと共同開発されたモデルの第2世代です。日本総輸入元のミズタニ自転車の公表値で、重量100g(ペア)、長さ135mm、価格4,400円。太さはTHINが29.8mm、THICKが31.3mmの2サイズから選べます。
素材は軽量なクレイトンラバーで、親指と人差し指が当たる部分をマッシュルーム形状に、裏側は指を保持するワッフル形状のリブに作り分けています。固定はテーパードコアによるシングルクランプで、外側にロックリングを置かない構造。コンパウンドはSoft 20Aが標準で、Gum色のみFirm 25Aが選べます。
向いているのは、下りで握り込む人と、同じ形で太さだけ変えて試したい人です。注意点としては、片側130mm以上のバーの空き幅が必要とされていること、そして初代Deathgripの交換用カラーがDEATH GRIP 2には使えないことが挙げられています。ロックリングの締め付けは2Nmとかなり低い指定なので、感覚で締めずにトルクレンチを使ってください。
29.8mmと31.3mmから手に合う太さを選べる、下り系のロックオングリップ▼
ODI:ロックオンの元祖が並べる、価格帯の広いラインナップ
ODIはロックオングリップを広めたブランドで、日本総輸入元のミズタニ自転車のカタログでは価格の幅が広いのが特徴です。ELITE PRO V2.1 LOCK-ONは4,620円で、長さ130mm。路面からの振動を受けるグリップ上部の肉厚を厚くし、手で握る下部の肉厚を落とすという設計で、上部には手のひらが馴染むグリップポイント、下部には指のホールド性を高めるリブが入ります。
手が大きい人向けにはROGUE V2.1 LOCK-ONが4,730円、衝撃吸収材のD3O GRIPコンパウンドを使うVANQUISH V2.1 LOCK-ONが6,380円と、上位モデルも用意されています。差し込み式のFLANGELESS LONG NECKは1,980円なので、同じブランドの中で固定方式と価格をまたいで選べるのが強みです。
注意したいのは、長さが130mmとやや短めな点です。ハンドルバーに余裕がある車体ではグリップの外側に空きが出ることがあり、見た目が気になる人もいます。逆にグリップシフトやバーエンドを付けていてスペースが厳しい車体では、この短さが利点になります。自分のバーの空き幅を測ってから選べば、どちらに転んでも失敗しません。
トレック:2,900円から選べる純正系ロックオン
トレックの自社ブランドグリップは、公式オンラインで仕様と価格が明示されているのが使いやすいところです。Line Comp MTBグリップセットは長さ135mm・外径32mm・重量128.0g・素材ゴムで2,900円。エルゴノミック Comp MTBグリップセットは長さ135mm・外径32mm・重量133.0gで3,500円。どちらもロックオン仕様、エンドタイプはクローズです。
この2つは、性格が名前の通り分かれます。Line Compは円筒形で、握る位置を自由に動かしたいトレイル寄りの使い方。エルゴノミック Compは手のひらを受ける形状で、舗装路や林道を長く走るときに効きます。外径32mmは今回比較した中では太い部類なので、手が小さい人はDMRのTHINなどと比べてから決めるほうが安全です。
デメリットは重量です。128.0gと133.0gは、エルゴンGA3の115g(ペア)やDMR DEATH GRIP 2の100g(ペア)と比べると重くなります。もっとも、グリップで軽量化を狙う場面は多くありません。価格を抑えつつロックオンの安心感がほしい、という目的ならこの2つは扱いやすい選択肢です。
交換作業は3mm六角レンチと推奨トルクで完結する

ロックオングリップの交換は、工具さえそろっていれば難しい作業ではありません。ただし、締めすぎと清掃不足という2つの落とし穴があります。ここではエルゴンの公式手順をベースに、実際の流れを整理します。
外すとき:レバー類を緩めてから、グリップを引き抜く
①シフトレバー、ブレーキレバーの取付ネジを緩めます。②グリップのクランプボルトを約3〜4回転させて緩めます。③シフター、ブレーキレバーのクランプボルトを緩めてハンドルバー内側に寄せます。④グリップを引き抜きます。エルゴンの取扱説明書は、この順番で作業するよう示しています。
ロックオンならボルトを緩めるだけで抜けますが、長く使っているとコアとバーが固着していることがあります。無理にひねらず、クランプを完全に緩めたうえで左右に少しずつ回しながら引くのが基本です。ここで力任せにすると、バーの表面を傷つけたり、レバーの角度を狂わせたりします。
差し込み式の場合は、グリップとバーの隙間に水やアルコール系クリーナーを少量流し込んで滑らせる方法が知られています。ただし、再利用したいときは慎重に。破れたらそのまま廃棄になるので、どうしても抜けないなら切って外し、新品を用意するほうが結果的に早いこともあります。
付けるとき:脱脂してから差し込み、角度を決めて固定する
取り付け前に、イソプロピルアルコールまたは脱脂剤を使ってハンドルのグリップ取付部を洗浄します。ここを飛ばすと、ロックオンでもクランプ部が滑る原因になります。洗浄後、グリップが止まるまで完全に差し込み、手首に負担がかからない自然な角度に調整します。
固定は3mm六角レンチとトルクレンチを使い、エルゴンGA3なら推奨トルク3Nm。DMR DEATH GRIP 2のロックリングは2Nmです。数値が小さいので、普段クランクやペダルを触っている人ほど「締め足りない」と感じるはずですが、ここは必ず指定値を守ってください。最後にエンドプラグを取り付け、シフトレバーとブレーキレバーをメーカーの取付け指示に従って調整・固定します。
取り付け後は、必ずグリップがしっかり固定されていることを確認してから乗ってください。エルゴンは50kmの乗車ごとにトルクを確認し、推奨トルクを維持するよう案内しています。新品はなじみで緩むことがあるので、最初の数回は乗車前に手で回してみる習慣をつけると安心です。ブレーキレバーの位置を動かした場合は、握り具合の確認も忘れずに。作業に不安があれば自転車店に依頼してください。
失敗パターン②:トルクをかけすぎてバー側を傷める
2つ目の失敗が、クランプボルトの締めすぎです。ロックオンのクランプは細いボルト1本で締めるため、力を入れればいくらでも回ってしまいます。アルミバーなら変形、カーボンバーなら最悪の場合は割れにつながります。エルゴンの説明書も「推奨トルク値以上の力でクランプを締めないでください」と明記しています。
原因は、トルクレンチを使わずに「回らなくなるまで」締める習慣です。対策は、3Nm程度の低トルクに対応した小型トルクレンチを1本持つこと。グリップだけでなく、ステムやシートクランプなど低トルク指定の箇所全般で使えるので、マウンテンバイクを長く乗るなら投資対効果は高い部類です。
もうひとつの対策は、メンテナンス方法を守ることです。エルゴンはクリーニングにぬるま湯と柔らかいスポンジを使い、石油ベースの製品や溶剤、油やグリスを使わないよう指示しています。チェーンオイルが付いた手でグリップを触ったまま放置すると、ゴムが膨潤して表面がべたつく原因になります。洗車のついでに、グリップも水拭きして乾かすだけで寿命が変わります。
締め付けの指定値はモデルごとに違います。エルゴンGA3は3Nm、DMR DEATH GRIP 2のロックリングは2Nm。どちらも3mm前後の小さな六角ボルトで、体感では「まだ締まる」と感じる強さです。カーボンハンドルバーの場合は特に、トルクレンチを使わない作業は避けてください。自信がなければ自転車店へ。
自分でやるか、店に頼むか。工賃から判断する
グリップ交換は自分でできる作業の代表格ですが、周辺部品の脱着が絡むと話が変わります。サイクルベースあさひの公式工賃表を基準に、どこまで自分でやるかを考えてみます。
グリップ交換だけなら880円、作業時間の目安は10分
サイクルベースあさひの工賃表では、MTB・クロスバイク(フラットハンドル)のグリップ交換が880円、作業時間の目安は10分〜と記載されています。工具を持っていない人が、トルクレンチを買うことを考えれば、最初の1回は店に頼んでしまうのも十分合理的な判断です。
注意点として、バーエンドバーが付いている場合は基本工賃に1,100円が加算されると記載されています。バーエンドを外してグリップを抜き、また組み直す手間が増えるためです。自分で作業する場合も同じで、バーエンド付き車体は工程が一段増えると考えておいてください。
なお、これらの金額は公式の工賃表に基づくもので、店舗・車種・時期により異なる場合があります。持ち込みパーツの可否も店によって方針が違うので、事前に電話や公式サイトで確認しておくとスムーズです。
ブレーキレバーやシフターを触るなら、まとめて依頼する手もある
同じ工賃表には、フラットハンドル用機械式ブレーキのブレーキレバー交換(左右セット)が3,960円とあり、注記として「グリップ脱着不要の場合は、基本工賃から880円マイナス」と書かれています。裏を返せば、レバー交換の工賃にはグリップの脱着分が含まれているということです。
つまり、レバー交換やケーブル交換を予定しているなら、同じタイミングでグリップも新品にしてもらうほうが効率的です。別々に頼むより作業の重複が減ります。ハンドルバー交換は4,180円、フラットハンドルのステム交換は3,740円なので、ハンドル周りを一度に見直すプランも立てやすくなります。
逆に、グリップだけをシーズンごとに替えたいという使い方なら、自分で作業できる体制を整えたほうが長期的には安くなります。判断基準は「他の部品を外す必要があるか」。グリップ単体なら自分で、レバーやケーブルが絡むなら店に、という切り分けが分かりやすいでしょう。
基本工賃=その作業単体にかかる標準の工賃。関連作業が必要なときは加算・減算される。サイクルベースあさひの表記では、グリップ交換880円にバーエンド付きで1,100円が加算され、ブレーキレバー交換(左右セット)3,960円はグリップ脱着不要なら880円マイナスとなる。

クロスバイクで通勤を始めて数か月、信号待ちのたびに手のひらを開いて握り直していませんか。手の付け根がしびれる、肩と首が張る、下り坂でハンドルが遠く感じる。こうし…
店に頼むとき、持っていくべき情報
店に依頼するなら、車体と一緒に「どこが痛いか」を伝えてください。手のひらの付け根なのか、小指側なのか、親指の付け根なのかで、提案されるグリップの形状が変わります。走行距離や主なコース(舗装路中心か、山のトレイルか)も伝えると、ラバーの硬さの選択が変わります。
加えて、ハンドルバーの素材がカーボンかアルミかは必ず申告してください。カーボンバーはクランプのトルク管理がよりシビアになります。エルゴンのGA2・GA3・GE1 Evoはいずれも公式にカーボンハンドルバー対応と明記されていますが、対応していないグリップもあるため、ここは事前確認が必要な項目です。
注意点として、店頭で握った感触と、実際に乗車姿勢で握った感触は違います。可能なら店内で車体にまたがらせてもらい、実際のハンドル角度で握らせてもらうのが確実です。ここを省くと、「店では良かったのに走ると合わない」というありがちな結果になります。
意外と知られていない、グリップ選びの本当の分かれ目
最後に、カタログスペックには出てこないけれど実際には効いてくるポイントをまとめておきます。ここを押さえると、次に買い替えるときの精度が上がります。
実は、価格差より「角度」と「トルク管理」のほうが効く
1,980円の差し込み式と6,380円のD3Oコンパウンドモデルでは、確かに振動吸収の設計思想が違います。しかし、多くの人が最初に感じている手の痛みは、グリップの素材ではなく取り付け角度と手首の向きが原因になっていることが少なくありません。エルゴンが取扱説明書のトップに「フィッティングのコツ」として角度調整を置いているのは、そこが効くと分かっているからです。
エルゴンは、テストライドと調整を繰り返して最適な角度を探すこと、最適な角度は左右で異なる場合があることを明記しています。つまり、買って付けて終わりではなく、数回走っては少し動かす、という詰め方が前提になっている部品なのです。高いグリップを買う前に、今付いているグリップの角度を5分かけて見直すほうが、費用対効果は高いかもしれません。
もうひとつ効くのがトルク管理です。締めすぎればバーを傷め、緩ければ雨で回ります。3Nmや2Nmという指定値は、その両方を避けるためのメーカーの答えです。感覚に頼らず数値で合わせられるようになると、グリップのトラブルはほぼ起きなくなります。
グリップの寿命は、距離ではなく「表面の変化」で判断する
グリップに明確な交換距離の指定はありません。判断材料になるのは、表面の状態です。ワッフルやリブの山が潰れて平らになっている、握ると硬く感じる、洗っても表面がてかっている、といった変化が出たら交換の目安になります。硬化したグリップは振動を伝えやすくなり、手の疲労が増えます。
劣化を早める要因は、紫外線と油分です。屋外に停めっぱなしの車体は当然ながら早く硬化します。チェーンオイルやパーツクリーナーが付いた手で触るのも良くありません。エルゴンは石油ベースの製品や溶剤、油、グリスをグリップに使わないよう明記しています。保管場所を屋内に変えるだけでも寿命は延びます。
注意点は、見た目がきれいでも内側が劣化していることです。特に差し込み式は、内径が広がって回りやすくなっていることがあります。乗車前にグリップをひねってみて、少しでも動くようなら交換か固定方式の見直しを検討してください。走行中に回るのは、単なる不快感では済みません。
1台に2種類、という使い分けもある
意外と知られていないのが、左右で違うグリップを使うという考え方です。グリップシフトが付いた車体では、シフター側だけ短いグリップになるため、そもそも左右非対称の構成になります。同じ理屈で、ブレーキを多く引く側だけ細めにする、といった調整も物理的には可能です。
また、季節で替える人もいます。夏は汗で滑りにくい硬めのパターン、冬は厚手のグローブに合わせて細めのものへ、という入れ替えです。ODIならFLANGELESS LONG NECKが1,980円、トレックのLine Comp MTBグリップセットが2,900円と、予備を持っても負担が小さい価格帯のモデルがあります。
ただし、左右で極端に違う太さにすると、バイクを振ったときの感覚が左右でずれます。試すなら、まずは同じモデルの太さ違いから始めるのが無難です。DMR DEATH GRIP 2のように、同一形状でTHIN 29.8mmとTHICK 31.3mmを選べるモデルなら、この比較がやりやすくなります。交換のたびにクランプボルトを緩めることになるので、締め付けは毎回2Nmの指定を守ってください。
まとめ:マウンテンバイクのグリップは太さと固定方式から決める
グリップ選びは、いきなり高いモデルを買うより、今の車体のバーの空き幅を測るところから始めるのが近道です。定規1本あればできますし、その数字が分かれば130mmから137mmまで並ぶ候補が一気に絞れます。手が痛い場所を思い出しながら、太さと形状を1段階変えてみてください。工具がなければ、サイクルベースあさひの工賃表で880円と示されている交換作業を店に頼み、そこで握り比べさせてもらうのも確実な方法です。自分で作業するなら、3mm六角レンチと低トルクに対応したトルクレンチを用意してから取りかかりましょう。
※本文中の価格・スペックは各メーカー公式および日本総輸入元の公表値、工賃は各店公式の料金表に基づくものです。時期・店舗により変更される場合があるため、購入・依頼の前に公式サイトで最新情報をご確認ください。ERGON公式/ミズタニ自転車(DMR・ODI日本総輸入元)/トレック公式/サイクルベースあさひ 自転車修理工賃

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