自転車のグリスはどこに塗る?748円の3号と2,022円の定番で分かれる選び方

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「ハブがゴリゴリする」「BBから異音がする」と自転車店で相談すると、ほぼ必ず出てくるのがグリスの話です。ところが売り場に行くと、シマノ、パークツール、フィニッシュライン、AZと銘柄が並び、容量も15gから454gまでバラバラ。チェーン用のオイルと何が違うのか、どこに塗ればいいのか、迷ったまま棚の前で立ち止まる方をよく見かけます。

先に結論をお伝えすると、自転車のグリスは「ベアリングやねじ部など、荷重を受けながら回る・締まる場所」に使うもので、チェーンには使いません。そして一般的な街乗り〜週末サイクリングなら、AZの3号マルチパーパス(45gで748円)やシマノのプレミアムグリス(100gで2,022円)のような自転車専用品を1本持てば、BB・ハブ・ヘッドまで十分まかなえます。

この記事では、メーカー公式・国内代理店の公表スペックをもとに定番5製品を比較し、塗る場所・塗ってはいけない場所、ハブのグリスアップ手順、失敗しやすいポイントまで、売り場で店員が説明する順番でまとめました。

🚲 この記事でわかること

・グリスとオイルの役割の違いと、自転車で使い分ける場所
・シマノ/パークツール/フィニッシュライン/AZの公式スペック比較
・ハブのグリスアップ手順と、初心者がつまずく玉当たり調整
・ディスクブレーキやカーボン部品など、グリスを避けるべき場所

目次

グリスとオイルは何が違う?「留まる潤滑」と「流れる潤滑」の差

グリスとオイルは何が違う?「留まる潤滑」と「流れる潤滑」の差の解説画像

グリスは“その場に留まって”ベアリングを守る潤滑剤

グリスは、油(基油)を増ちょう剤で半固体状にした潤滑剤です。いちばんの特徴は、塗った場所から流れ落ちにくいこと。自転車のBB(ボトムブラケット)、ハブ、ヘッドセットのように、玉(ボール)とカップが荷重を受けながら回転する部分では、潤滑剤が長期間その場に留まってくれないと、金属同士が直接こすれて摩耗が進みます。

たとえばAZの自転車グリス3号は、公式に用途を「自転車のBB、ハブ、ヘッド部分のベアリングや摺動部の潤滑」と明記しています。シマノのプレミアムグリスも、販売店の商品説明でBB・ハブ・ヘッドセット・ペダルに使えると案内されています。つまり自転車用グリスの主戦場は「回転部の軸受け」です。

通勤で毎日雨の日も走る方ほど、この「留まる力」が効いてきます。水をかぶっても流れにくいので、ベアリング内部に水やホコリが入り込むのを防ぐフタの役割も兼ねるからです。

一方で、粘りがあるぶん、ワイヤーの内部やチェーンのコマの隙間のような細い場所には浸透しません。「なんでもグリスを塗っておけば安心」ではない点は覚えておいてください。

オイルが担当するのはチェーン・ワイヤー・レバーの可動部

オイルは液体で、細かな隙間に入り込むのが得意です。チェーンのローラーとピンの間、変速ディレーラーの可動部、ブレーキレバーの支点などは、グリスでは奥まで届かないのでオイルの担当になります。

国内の工具メーカーであるホーザンのメカニックアカデミーでも、オイル類としてチェーン専用の「C-15チェーンルブ」、サスペンション・ブレーキレバー・シフトレバー・ワイヤー・ディレーラーに使える「C-10バイクルブ」を、グリス類とは別カテゴリで紹介しています(ホーザン ケミカル(オイル))。

チェーンにグリスを塗ると、粘りで砂やホコリを大量に抱え込み、黒い研磨剤のような状態になります。変速の渋さやチェーンの早い摩耗につながるので、チェーンは専用オイルと洗浄で管理するのが基本です。

チェーンの洗浄と注油の頻度については、別記事で詳しくまとめています。

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失敗パターン①:ゴリゴリするハブに潤滑スプレーを吹いてしまう

売り場でよく聞く失敗が、「前輪を回すとゴリゴリするので、手元の潤滑スプレーをハブの隙間に吹き付けた」というケースです。その場では一時的に回りが軽くなったように感じますが、数日後にかえって異音が大きくなることがあります。

原因は、サラサラのオイルが内部のグリスに混ざって粘りを落としてしまうこと。緩んだグリスはベアリングの外へ流れ出し、雨水やホコリも入り込みやすくなります。結果として、潤滑切れを早める方向に働いてしまうのです。

対策はシンプルで、グリスで潤滑している場所には、グリスで補給すること。ハブならホーザンが案内するように、一度分解して古いグリスを拭き取り、新しいグリスを詰め直します。分解に自信がなければ、無理に隙間へ何かを吹き込まず、自転車店で点検してもらうほうが結果的に安く済みます。

📖 用語チェック

ちょう度(号数)=グリスの硬さの目安。AZの公式表記では3号が「25℃ 220~250」、2号が「25℃ 265~295」で、数値が小さいほど硬めです。
基油=グリスの元になる油。鉱物油、PAO、オレフィン系合成油などがあります。
増ちょう剤=基油を半固体に保つ成分。パークツールPPL-1は「ポリウレアベース」と公表されています。

自転車でグリスを塗る場所・塗ってはいけない場所はどこ?

基本の3か所はBB・ハブ・ヘッドセット

自転車でグリスを使う代表的な場所は、BB(クランクの軸受け)、ハブ(車輪の軸受け)、ヘッドセット(ハンドルの回転軸受け)の3か所です。いずれも玉とカップで荷重を受けながら回転する構造で、AZ・シマノともに公式・販売店説明でこの3か所を用途に挙げています。

体感しやすいのはヘッドセット。ここのグリスが切れると、ハンドルを切ったときに「コクッ」と引っかかる感触が出たり、段差で異音がしたりします。ハブは車輪を手で回したときのゴリゴリ感、BBはペダルを踏み込んだときの「パキッ」「ギシッ」という音がサインになりやすいです。

ただし、最近の完成車はシールドベアリング(密閉型)を使った部品が多く、この場合は外からグリスを足す構造になっていません。異音が出たらベアリングごと交換するのが一般的です。自分の自転車がカップアンドコーン式(玉押し式)かシールド式かは、部品の型番から取扱説明書を確認するか、購入店に聞くのが確実です。

BBの音は、クランクやペダルのねじ部から出ていることもあります。

ねじ部・ペダル・シートポストは「固着防止」のために塗る

グリスには潤滑だけでなく、金属同士の固着や錆を防ぐ役目もあります。ペダルのねじ部、BBのねじ部、シートポストの差し込み部などに薄く塗っておくと、数年後に外すとき「固着してどうしても回らない」という事態を防ぎやすくなります。

フィニッシュラインのプレミアム グリスは、販売店の商品説明でベアリングに加えて「ステアリングコラム、シートポスト、ネジ山」への使用にも適していると案内されています。シマノの油圧ディスクブレーキのディーラーマニュアルでも、ブレーキホースのコネクティングボルトのねじ部とオリーブの外側にシマノプレミアムグリスを塗付する手順が示されています(シマノ ディーラーマニュアル)。

注意点として、部品によってはメーカーがグリス以外の指定をしている場合があります。塗る前に、その部品の取扱説明書で指定ケミカルを確認してください。

ディスクローター・ブレーキパッド・リムの制動面は油脂厳禁

グリスを塗ってはいけない代表がブレーキの摩擦面です。シマノの油圧式ディスクブレーキのディーラーマニュアルには「ディスクブレーキローター、ブレーキパッドに油脂が付かないようにする」「油脂が付いた状態で走行するとブレーキが効かなくなり転倒や衝突により重傷を負う可能性があります」と明記されています。

さらに同マニュアルは、パッド交換が必要な条件として「ブレーキパッドに油が付着した」場合を挙げています。つまり、パッドにグリスが付いたら洗って済ませるのではなく交換が前提です。リムブレーキの車種でも、リムの側面(ブレーキシューが当たる面)に付けば同じように制動力が落ちます。

ハブのグリスアップで車輪を外した直後、グリスの付いた手でローターを触ってしまう――これが実際に多い事故の入口です。作業中は手袋を替えるか、ローターを触らない段取りを意識してください。

ブレーキが少しでも効きにくいと感じたら、走行前に自転車店で点検を受けてください。安全部品に関しては「不安なら自転車店へ」が鉄則です。

カーボン部品には「グリスではなく専用コンパウンド」

カーボンフレームやカーボンシートポストのクランプ部分は、グリスを塗ると滑りやすくなり、固定するために締め付けを強くしがちです。締めすぎはカーボン部品の破損につながるため、ここには滑り止め成分の入った専用コンパウンドを使うのが一般的です。

ホーザンが扱うパークツールの「SAC-2(スーパーグリップコンパウンド)」は、公式説明で「CFRP(カーボン繊維樹脂)に最適」とされ、シートポスト・ハンドル・ステムのクランプ部用と案内されています。一方で「ねじ部には使わない」という注意も付いています(ホーザン ケミカル(グリス))。

アルミのクロスバイクに乗っている方は通常のグリスで問題ない場面が多いですが、カーボン部品を組み合わせたロードバイクでは、部位ごとにケミカルを使い分けることになります。

カーボン部品の指定トルクや使用ケミカルはメーカーごとに異なります。部品に付属する説明書の指示を最優先にしてください。

⚠️ 作業前にチェック

・ディスクローター/ブレーキパッド/リム制動面には油脂を付けない(シマノのマニュアルは油が付いたパッドの交換を指示)
・シールドベアリングの部品は外からグリスを足せない構造が多い
・カーボンのクランプ部はグリスではなく専用コンパウンド、ねじ部には使わない
・部品の説明書で指定ケミカルを確認してから塗る

自転車グリスの定番はどれ?公式スペックで並べた5製品比較

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比較表は「ちょう度・温度範囲・容量単価」の3点で読む

自転車用グリスを比べるときは、ブランド名よりも「硬さ(ちょう度)」「使用温度範囲」「容量と価格」の3点を見ると違いが整理しやすくなります。硬めのグリスは流れ出しにくく雨に強い一方、回転はわずかに重く感じやすい傾向があります。

下の表は、自転車の教科書調べとして、メーカー公式・国内代理店・大手販売店の公表値をまとめたものです。表に空欄が多いのは、公表されていない値を推測で埋めていないためです。シマノやフィニッシュラインは温度範囲やちょう度を国内販売店ページで明示していないので、比較の軸は「用途」と「価格」になります。

📊 自転車用グリス5製品のスペック比較(自転車の教科書調べ)
製品 容量 ベース・硬さ 温度範囲 価格(税込)
シマノ プレミアムグリス 100g 鉱物油ベース 公表なし 2,022円
パークツール PPL-1 113g ポリウレアベース 公表なし 1,870円
フィニッシュライン プレミアム グリス 100g 防錆・撥水 公表なし 希望小売2,145円(店舗で変動あり)
AZ 3号 BGR-003 45g PAO・3号 -20~+130℃ 748円
AZ セラミック BGR-004 40g オレフィン系合成油・2号 -50~+200℃ 733円程度(公式ショップ)

シマノ プレミアムグリス:迷ったら基準にしたい純正品

シマノ プレミアムグリスは、旧名称「デュラエースグリス」として長く売られてきたシマノ純正のグリスです。名称が変わっただけで、生産終了ではなく現行品として販売されています。容量は50g・100g・500gの3種類で、100g(Y04110200)はサイクルヨシダの標準価格とワイズロードの販売価格がともに2,022円でした。50g(Y04110000)はサイクルヨシダの標準価格で1,494円程度です(販売店により変動あり)。

推しどころは、シマノ自身がディーラーマニュアルの中で指定している点です。先ほど触れた油圧ブレーキホースのコネクティングボルトのように、シマノ部品の作業手順に「シマノプレミアムグリス」と名指しで出てくるので、シマノコンポの自転車なら指定どおりに揃えられる安心感があります。組成は鉱物油ベースで、増ちょう剤と防錆剤入り。ワイズロードの説明では潤滑性・耐水性・耐腐食性に優れるとされています。

デメリットは、45gで748円のAZと比べると容量あたりの価格が上がること。ハブとヘッドを年1回グリスアップする程度なら、100gでも数年は持つので、使い切れずに古くなる点も考えておきたいところです。

パークツール PPL-1:ポリウレアベースで耐水性重視

パークツール PPL-1 ポリリューブ1000は、アメリカの工具メーカー・パークツールのグリスで、国内代理店はホーザンです。ホーザン公式の税込価格は1,870円で、サイクルヨシダの標準価格も同じ1,870円。容量は113gのチューブ入りで、カップ入りのPPL-2(454g)もあります。

ホーザンの説明では「自転車のメンテナンス用として、特別に開発された耐磨耗性に優れたポリウレアベースのグリース」で、熱変化や耐水にも優れるとされています。ホーザン自身のハブグリスアップ手順でも、使用ケミカルとしてPPL-1が指定されています(ホーザン PPL-1)。手順書と同じグリスで作業したい方には選びやすい1本です。

シマノ100gより容量が多く価格は低めなので、容量あたりの単価で見るとバランスがよい位置にいます。雨の日も走る通勤車のハブ・ヘッドの定期メンテ用に向いています。

注意点として、ショップ用のPPL-2は454gと大容量で、個人で使い切るのは難しい量です。PPL-2は販売店の価格で3,534円程度(時期により変動)なので、自転車を何台も整備する家庭向けと考えてください。

安く済ませたい人・こだわりたい人はどれを選ぶ?

AZ 3号 BGR-003:748円で雨に強い“硬め”の万能タイプ

コスト重視で1本選ぶなら、AZ(エーゼット)の自転車グリス3号 マルチパーパス BGR-003が候補になります。AZ公式ショップの税込価格は45gで748円、AZのYahoo!店でも同額でした。15gの小容量は公式ショップで605円程度です。

公式スペックは、基油が「高粘度指数で温度変化に強いPAO」、ちょう度3号(25℃ 220~250)、使用温度範囲-20~+130℃。耐水性と付着性に優れ、「雨天時の走行に強く、潤滑効果が持続するためメンテナンス期間が延びます」と説明されています(AZ公式 BGR-003)。

3号は2号よりも硬めなので、流れ出しにくいのが強み。通学・通勤で雨ざらしになりがちなシティサイクルやクロスバイクのハブ・ヘッドにちょうど合います。

デメリットは、硬めのぶん回転がわずかに重く感じやすい点。軽さを追うレース志向の方には、同じAZでも2号の製品が向いています。

AZ セラミック BGR-004:軽い回転と寒冷地向けの2号

同じAZでも、回転の軽さを重視するならセラミックグリス2号 BGR-004が選択肢になります。公式スペックは、基油が「高性能のオレフィン系合成油」、ちょう度2号(25℃ 265~295)、使用温度範囲-50~+200℃。セラミック粉末のボロンナイトライドを配合し、セラミックベアリングにも使えると案内されています(AZ公式 BGR-004)。

価格はAZ公式ショップで20gチューブが625円程度、40gチューブが733円程度です。3号より柔らかいので、ロードバイクのハブのように「軽く回したい」部位と相性がよく、低温側の温度範囲も広いので冬場に早朝走る方にも向いています。

ただし、柔らかいグリスは硬めのものに比べて流れ出しやすい傾向があります。雨の多い通勤路で使うなら、グリスアップの間隔を短めにするなどの管理が必要です。「軽さ」と「持ち」はトレードオフだと考えておいてください。

フィニッシュライン プレミアム グリス:ねじ山・シートポストまで1本で

フィニッシュラインのプレミアム グリス(TOS15200)は、アメリカ製の100gチューブで、ナチュラムの表示ではメーカー希望小売価格2,145円程度です(実売は店舗により変動あり)。以前流通していた「プレミアム テフロン グリス(TOS07600)」は、アルペンの通販では在庫なし表示になっており、現在はTOS15200が店頭の中心です。

販売店の商品説明では、ボールベアリングとボールレースに膜を形成して摩耗や歪みを防ぐこと、防錆添加剤入りで撥水性があること、そしてステアリングコラム・シートポスト・ネジ山への使用に適していることが挙げられています。ベアリング用と固着防止用を1本で兼ねたい方にぴったりです。

弱点は、ちょう度や温度範囲が国内販売店ページで確認できない点。数値で選びたい方にはAZのほうが判断しやすいでしょう。

容量は「年に何か所やるか」で逆算する

実は、グリス選びで意外と見落とされるのが容量です。ハブ前後とヘッドを年1回グリスアップする程度なら、1回に使う量はわずか。454gや500gの大容量を買っても、使い切る前に異物が混ざったり、キャップ周りが汚れたりしがちです。

1台だけの整備ならAZの15g〜45g、シマノの50g、パークツールの113gあたりが現実的なラインです。家族の自転車を何台もまとめて整備するなら100g以上を選ぶと、容量あたりの価格を抑えられます。

ひとつ注意したいのが、異なる種類のグリスを混ぜないこと。増ちょう剤の種類が違うと相性が悪い組み合わせもあるため、グリスを変えるときは古いグリスをしっかり拭き取ってから新しいものを詰めてください。

🎯 目的別おすすめ
目的・シーン おすすめの選択 価格(税込)
雨でも走る通勤・通学車 AZ 3号 BGR-003(硬めで流れにくい) 45gで748円
シマノコンポのロード・クロス シマノ プレミアムグリス(マニュアル指定品) 100gで2,022円
ホーザン手順書どおりに作業 パークツール PPL-1 113gで1,870円
軽い回転・冬の早朝ライド AZ セラミック BGR-004(2号) 20gで625円程度

ハブのグリスアップは自分でできる?ホーザンの手順で流れを確認

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必要な工具と作業時間の目安

カップアンドコーン式のハブなら、グリスアップは自分でも挑戦できる作業です。ホーザンのメカニックアカデミーでは、必要な工具として「SCW-14/15/17(ハブコーンレンチ)」「PPL-1(グリス)」「P-878(ピンセット)」「PAW-12(モンキーレンチ)」「Z-294(クリーナー)」を挙げ、作業時間は30分、実施の目安は半年~1年としています(ホーザン ハブグリスアップ)。

ポイントは、ハブコーンレンチが必須なこと。玉押し(コーン)の薄い二面幅は一般的なスパナでは入らないため、ハブの規格に合ったサイズのコーンレンチを用意します。ボールを拾うピンセットも、あると作業のストレスがぐっと減ります。

作業は車輪を外して行うので、スタンドで自転車を安定させておくと楽です。メンテナンススタンドの選び方は別記事にまとめています。

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注意点として、シールドベアリングのハブではこの手順は使えません。作業前に自分のハブの構造を必ず確認してください。

ホーザンの手順を8ステップに整理

ホーザンの手順をもとに、作業の流れを整理すると次のようになります。

  1. 車輪を外し、ハブ軸からクイックレバーを抜く
  2. ハブコーンレンチとモンキーレンチで、ロックナットを緩める
  3. ロックナットと玉押しを外す(ボールが落ちないよう注意)
  4. ハブ軸を抜き、ボールを回収する。左右のボールが混ざらないように分けておく
  5. クリーナーで古いグリスを落とし、傷んだ部品があれば交換する
  6. カップにグリスを塗り、ボールを並べる(ボールが滑るならグリスを足す)
  7. 玉押しにも薄くグリスを塗り、ハブ軸を戻して反対側から玉押しを手で締める
  8. ガタがなくなるまで玉押しを締め、ロックナットで固定する

ホーザンの手順書では、全工程を通じて「ベアリングのボールが落ちないように注意しましよう」と繰り返し注意しています。小さな鋼球は床に落ちると転がって見つけにくいので、トレーや布の上で作業するのがおすすめです。

失敗パターン②:玉当たり調整を締めすぎて回転が重くなる

ハブのグリスアップで一番つまずくのが、最後の玉当たり調整です。よくある失敗は、ガタを消そうとして玉押しを強く締めすぎ、車輪の回転が重くなってしまうケース。逆に、ロックナットを締める瞬間に玉押しが一緒に回ってしまい、ガタが残ることもあります。

原因は、玉押しとロックナットを同時に扱う作業の難しさにあります。玉押しをコーンレンチで押さえたまま、反対の手でロックナットを締めるのがコツで、締め終わったら車輪を回してゴリゴリ感がないか、軸を上下に揺すってガタがないかを確認します。

対策としては、①まず「ガタがギリギリなくなる」位置を探す ②その位置でコーンレンチを固定したままロックナットを締める ③回転とガタを再確認し、ずれたらやり直す、という順番を守ること。何度やってもガタと重さの両立ができないときは、無理をせず自転車店に依頼してください。車輪の固定に関わる部分なので、不安が残ったまま走るのは避けましょう。

どれくらいの量を、どの頻度で?グリスアップの目安と落とし穴

頻度は「半年~1年」が目安、雨の多い使い方なら早めに

ハブのグリスアップ頻度について、ホーザンは半年~1年を目安にしています。晴れた日だけ走る趣味のロードバイクなら長め、毎日の通勤で雨の日も走るクロスバイクなら短めと、使い方で幅を持たせて考えるのが現実的です。

雨天走行が多いと、ベアリングのシールの隙間から水が入り込み、グリスが乳化したり流れ出したりします。AZが3号グリスの説明で「雨天時の走行に強く、潤滑効果が持続するためメンテナンス期間が延びます」と書いているのは、まさにこの点を意識したものです。

頻度を決める一番確実な方法は、日常の点検で「変化」に気づくこと。車輪を浮かせて手で回したとき、以前より回転が重い、ゴリゴリ感が出た、軸を揺すってカタつきがある――こうしたサインが出たら、期間に関係なく点検のタイミングです。

ただし、ゴリゴリ感の原因がカップや玉押しの摩耗・傷の場合、グリスアップだけでは解消しません。分解して傷を見つけたら、部品交換の判断が必要です。

実は「高いグリス=長持ち」とは限らない

意外と知られていないけれど、グリスの寿命を左右するのは銘柄の値段よりも「古いグリスをどれだけきれいに落としたか」と「作業後にシールや玉当たりを正しく戻せたか」です。

ホーザンの手順でも、新しいグリスを塗る前にクリーナーで古いグリスを落とす工程がはっきり組み込まれています。古いグリスには摩耗粉や砂が混ざっていて、そこに新しいグリスを継ぎ足すと、研磨剤入りのグリスを詰めているのと同じ状態になりかねません。

たとえば、45gで748円のAZ 3号を毎回きちんと清掃して詰め直すのと、100gで2,022円のシマノを古いグリスの上から足すのとでは、前者のほうがベアリングの状態を保ちやすいことがあります。グリスにお金をかける前に、クリーナーとウエスを用意するほうが先、というのが売り場で伝えたい本音です。

もちろん、シマノ部品でマニュアル指定があるなら指定品を使うのが原則です。そのうえで「清掃の手間」を省かないことが大切です。

量の考え方:ボールが並んで留まる程度から

グリスの量は「多ければ多いほど安心」と思われがちですが、はみ出したグリスはホコリを呼び寄せ、周りを汚す原因になります。ホーザンの手順では、カップにグリスを塗ってボールを並べ、ボールが滑るようならグリスを足す、という書き方をしています。つまりボールがカップに並んで留まる程度が出発点です。

組み付けたあと、ハブの外にはみ出したグリスはウエスで拭き取っておきましょう。特にディスクブレーキ車は、はみ出したグリスがローター側に回らないよう注意が必要です。

ねじ部やシートポストへの固着防止なら、指先やウエスで薄く一層伸ばす程度で十分役目を果たします。厚塗りはかえって締め付けの感触をわかりにくくします。

Q 車用やバイク用ではない汎用グリスを自転車に使ってもいいですか?
A 部品メーカーが指定品を定めている場合は指定品が原則です。自転車専用品は用途(BB・ハブ・ヘッド)が明記されているので、迷ったら自転車用を選ぶと判断がシンプルです。汎用品を使う場合も、用途と硬さ(号数)を確認してください。
Q 違う銘柄のグリスを継ぎ足しても大丈夫?
A ベースや増ちょう剤が違うと相性が悪いことがあるため、銘柄を変えるときは古いグリスを拭き取ってから詰め直すのが安全です。

ブレーキ・変速まわりのグリスはどう扱う?専用品と油脂厳禁ゾーン

ワイヤーの摺動部にはシマノ「SIS SP41グリス」が指定されている

変速やブレーキのワイヤー(インナーケーブル)とアウターケーシングの摺動部にも、グリスが使われます。シマノのディーラーマニュアルでは、使用前にインナーケーブルとアウターケーシングの摺動部分に「SIS SP41グリス(Y04180000)」を塗布するよう指示されています。

同じマニュアルには、インナーケーブルのグリスを拭き取ってしまった場合はSIS SP41グリスの塗布を推奨する記述や、変速調整ができないときの確認項目として「ケーブルの洗浄およびグリスアップ」も挙げられています。変速が渋い、レバーが重いと感じたとき、ワイヤーのグリス切れが原因になっていることがあるわけです。

ワイヤーの交換時にはこの専用グリスを使うのが原則で、ベアリング用のプレミアムグリスとは用途が分かれています。

ワイヤーを抜いたり張り直したりすると変速調整が必要になるため、調整に自信がなければ自転車店に任せるのが無難です。

ディスクブレーキ車のグリスアップは「ローターを守る段取り」から

ディスクブレーキ車のハブやヘッドをグリスアップするときは、作業そのものよりもローターとパッドを油脂から守る段取りが大切です。前述のとおり、シマノのマニュアルは油脂が付いた状態での走行はブレーキが効かなくなる危険があるとし、油が付着したパッドは交換対象としています。

具体的には、①車輪を外したらキャリパーにパッドスペーサーを入れる(シマノも車輪を外した場合の装着を推奨) ②ローターに触れる前に手袋を替えるか手を洗う ③グリスのチューブやウエスをローターの近くに置かない、といった段取りを徹底します。

ディスクブレーキの仕組みやパッドの寿命については、こちらで詳しく解説しています。

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万一ローターやパッドに油脂が付いたかもしれないと感じたら、そのまま走らずに自転車店で点検を受けてください。ブレーキは命に関わる部品です。

車種・使い方別:グリスをどこまで自分で管理するか

最後に、どこまでを自分で管理し、どこからを店に任せるかの目安を車種別に整理します。

シティサイクルで通勤・通学している方は、ペダルやシートポストの固着防止、ハブ周りの異音チェックあたりが現実的なセルフメンテの範囲です。内装変速やローラーブレーキなど専用の構造を持つ部品は、メーカー指定のグリスや手順があるため、店での整備が向いています。

クロスバイクやロードバイクに乗っている方は、ホーザンの手順を参考にハブのグリスアップへ挑戦する価値があります。1本目のグリスはAZ 3号やパークツール PPL-1、シマノコンポで揃えたいならシマノ プレミアムグリスを選ぶと、BB・ハブ・ヘッドまで一通りまかなえます。

カーボン部品を使ったロードバイクや油圧ディスクブレーキ車は、部位ごとに専用コンパウンドや指定グリスが分かれるため、説明書の確認が欠かせません。安全部品に関わる作業で少しでも不安があれば、自転車店へ相談してください。

🚲 おすすめポイント

ベアリングにはプレミアムグリスやPPL-1などのベアリング用グリス、ワイヤーにはシマノ指定のSIS SP41グリス、カーボンのクランプ部にはSAC-2のような専用コンパウンド。「1本で全部」ではなく、部位ごとに指定を確認するのが失敗しない近道です。

まとめ

🚲 この記事の結論

自転車のグリスはBB・ハブ・ヘッドなど荷重を受ける軸受けとねじ部に使い、チェーンやブレーキ面には使いません。まずは自転車専用品を1本選び、古いグリスを落としてから詰め直しましょう。

✅ 要点チェック
  • ✔ 硬さで選ぶ:雨に強い3号か軽く回る2号か
  • ✔ メーカー指定を優先:シマノ部品はマニュアルを確認
  • ✔ 容量は台数で逆算:1台なら小容量で十分
  • ✔ ブレーキ面は油脂厳禁:付いたパッドは交換
  • ✔ 清掃が寿命を決める:継ぎ足さず詰め直す

最初の一歩は、車輪を浮かせて手で回し、ゴリゴリ感やガタがないかを確かめることです。気になる感触があれば、自分のハブがカップアンドコーン式かを確認し、グリスアップに挑戦するか自転車店に任せるかを決めてください。

※価格は2026年9月時点の各公式・販売店ページの表示で、時期や店舗により変わります。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

自転車の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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